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ケイコ 目を澄ませてのteramovoのレビュー・感想・評価

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)
3.8
2021年を舞台に全編16mmフィルム。
アングルが全部ハマってて、すごくカッコよかった。
荒川で撮られたシーンはうんとよくて、高架の上を走る電車から溢れる眩い光が高架下をチカチカと照らすシーンや朝焼けの中の河川敷はフィックスのシーンが大半で写真のうえに映像、映画があるんだなと再認識させられた。

映像が季節とか音とか周辺環境とか生々しいゆえに、脚本もケイコの目から訴えかけて来る機微な感情の移ろいを読み取らせるリアリティの高い人間のストーリーだった。

言語は知らないとどうしようもない。
ケイコが友人と手話で楽しそうに会話をしているシーンは顕著で字幕が入らない。まるで手話を話せない聴者と手話を話せるろう者の間に壁を感じるシーンだった。

昨年放送されていた中途失聴者が主演のドラマsilentと比較するとストーリーの中で手話を話す聴者はとても少なく、ケイコ自身が読唇術で言葉を読む事が多かった。この排他的な環境に実社会のようなどんよりした空気を感じた。

「ロード10km,アルバイト,ジム,帰宅」のサイクルから彼女のせいかつを知る。
ケイコの感情や言語化されない胸の内を目を澄ませて観察する。
至って普通の日々、特異なギミックはない。ただそこにある機微な変化に観客は胸を掴まれる。
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