マーフィー

ケイコ 目を澄ませてのマーフィーのネタバレレビュー・内容・結末

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

2023/01/29観賞。

音楽がない作品で、感音性難聴の主人公の生活でさらに声のセリフが少ない。
だけに環境音やボクシングのミット打ち、縄跳びの音などすごくいい。
冒頭のシーンの音なんてグルーヴ生んでる。めちゃくちゃいい。


聴覚障害であるが故の生きづらさが、生活の中でも練習の中でも試合の中でも自然に、そしてとても上手く描かれていると感じた。
またインターホンや目覚ましなどの、聴覚障害に対する環境調整が勉強になった。
この作品ではないけど、火災報知器とか命に関わる危険を知らせる音についても、何かの番組で取り上げられていた記憶がある。
今後そういう生活上の違いにも興味をもっていけたらと思った。


「はい」の言い方が見事。
そして最後の試合での叫び声やレフェリーへの抗議、
爆発する感情を全身で表現する様は心にくる。


ジムでの手話を使わない会話みたいなのはホワイトボードに書いてでの会話なので、必然的に言葉がシンプルになったり、必要最低限の指示になりがちで、どうしても感情表現や気持ちのやりとりが普通に会話してる人より少なくなってしまいがちだと思う。
きっと聴覚障害者の皆が直面することだと思った。
耳が聞こえる人同士の会話や、手話同士の会話とは異なる会話方法では、単に「言葉を伝え、受け取れるか」という問題だけではなく、言葉のニュアンスやノンバーバルな部分を含めてのコミュニケーションが課題になると気付かされた。

そして劇中では、分かりにくかったケイコの気持ちが、会長の妻が日記を読むシーンで分かっていくのがとても印象深かった。
あのシーンで読んでいる声が会長の妻であることは、観ている人もケイコの気持ちを理解していきやすくなる演出らしい。

読んでいる声がケイコ本人だったら、スラスラ読んでても生まれつき聴覚の障害がある人としてはリアルじゃないし、ケイコは発声に難しさがあると考えられる(※)ので、その発声で読まれていたら伝わりきらない部分もあったかもしれない。
演出的な効果だけでなく、リアルな作品としての事情もあったのかなと思う。


観れてよかったなと思える映画だった。


※生まれつき聴覚障害があるということは、自分の声のモニタリングができないので、発声についても難しさがあると推測。
前述の「はい」の言い方を聞く限りでもそう考えられる。
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