さすらいのエマノン

ケイコ 目を澄ませてのさすらいのエマノンのレビュー・感想・評価

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)
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三宅唱監督、脚本。酒井雅秋氏共同脚本。原作、小笠原恵子氏「負けないで!」。原作は未読。

本作の主役を演じられた、岸井ゆきのさんは好きな俳優さんだ。
初めて彼女を知ったのはBK大阪の朝ドラ『まんぷく』である。タカちゃん役を好演されておられた。
少し離れた大きな瞳。小さなお顔に小さな体躯。所謂、正統派美人では無く、印象に残るお顔立ち。

次に彼女を観たのは『神は見返りを求める』のゆりちゃん役。体当たり演技が凄かった。

そして、本作で日本アカデミー賞女優賞、キネマ旬報ベスト・テン主演女優賞、毎日映画コンクール女優主演賞等を受賞されたと聞き鑑賞したのであった。

岸井さんは、ろうの女子ボクサーケイコを演じる。淡々と、ひたぶるにボクシングに打ち込む姿は凄いと思った。役作りの為にボクシングや筋トレ等を行ったのだとすぐに分かった。本作での彼女のアクトは素晴らしいの一言。文句無し!

では今作の出来はと云うと、一言で言い表せることが出来る。

凡庸。

ろう者の世界を表したいのか、終始、静かな雰囲気と薄暗い画作り。何だか、創り手達は、身体障がい者に偏見を抱いているのではと感じた。
ろうの人間は薄暗い世界に常に居なければイケないのか? そうでは無かろう? 恋だってするだろうし、友達や家族と冗談を言って盛り上がったりもするだろう。そんな描写は一回しか描かれていない。

つーか、この映画は物語が無い。酷いなと思った。『メ~テレ』と云うテレビ朝日のネット局の60周年記念作品と云うことで、沢山の賞を此の作品も受賞しているが、此れの何処が面白いのかさっぱり理解出来なかった。

ケイコの性格故に、こんな映像作品になったのか? 唖然とした。原作に沿った演出にしても此れは頂けない。

試合の擬斗を演者二人に付けて、長回し。最低の行為だと感じた。映画と演者に対して失礼極まりない。カットワークでアクションを見せないので有れば其れは最早、映画では無く(舞台)だと思う。

そして、三人称視点で描かれる総ての創作は、神の視点で無くてはならない。ケイコがボクシングを始めた動機を(ケンカが強くなりたいのかも知れない)と云うことだけに止め、回答を示さない。最大の禁忌である。
因みに辞めたいと思う理由にも触れない。何故?

岸井ゆきのさん、三浦友和さんが本当に好演されておられたので悪く云いたく無いのですが駄作だと感じました。

やまなし
おちなし
いみなし 

やおい映画を、弥生3月に観てしまった自分を責めます。終わり。