主人公は音が聞こえないはずなのに、音がものすごく聞こえてくる映画だった。意思を伝えられないもどかしさは見ていて苦しくなるが、ケイコは当たり前にそれも受け入れているんだろう。冒頭の練習シーンは度肝を抜かれた。
ただ、主人公にとっての困難が「ジムの閉鎖」という、本人と関係のないところにありすぎて感情移入できなかった。ボクシング選手になる過程を描く映画かと思ったら最初からボクシング選手の状態でスタートしたのも(こちらの勝手な勘違いだけど)入り込めなかった理由なのか。
ボクシングという男が主にやる格闘技に加え、ボクシング選手にとって致命的な聴覚障害者という、ケイコは複合マイノリティだと思うのだけど、そこを深く描くこともせず、なんだか淡々とした印象。
結局何が言いたいのかわからず、気づいたら映画が終わってて、演技がよかったという感想に終わった。