リンキーオーヘン

皇帝のいない八月のリンキーオーヘンのレビュー・感想・評価

皇帝のいない八月(1978年製作の映画)
2.0
先に紹介した「カサンドラクロス」から
多大な影響を受け執筆されたことで有名で
実際に未遂で幕を閉じたクーデター事件が
元ネタになったと言われる小林久三の原作
「皇帝のいない八月」の映像化作品です

博多発東京行きの寝台特急「さくら」
その車内にはある決意に燃えた一団が
乗り込んでいた!
腐敗した現政権の転覆と日本古来の伝統を
重んじた文化の復活を目論む一部の自衛官
によるクーデター計画が密かに進行中
ある発砲事件から計画の一端を掴んだ
内閣調査室と幕僚警務部は合同で調査を
開始する…

日本映画界を代表するような豪華俳優陣が
多数出演する中、制作当時は端役がメイン
の渡瀬恒彦が主役の座を手にしたのには
兄である渡哲也が断ったのが理由だとか?
とにもこの作品には三國蓮太郎、佐分利信
高橋悦史、丹羽哲郎、岡田瑛二ら重鎮組
山本圭、風間杜夫、永島敏行、森田健作
と言った中堅俳優が目白押しです
そして吉永小百合、太地貴和子ら邦画界の
至宝とも言える女優も出演しています

日本映画の黎明期から映画制作に携わって
来た大ベテランの山本薩夫が監督を務めて
います
名作「新幹線大爆破」らと同様に内容が
内容なだけに国鉄や自衛隊からは一切の
撮影協力が得られず撮影には苦労した
ようです

着々と進められるクーデター計画と
それを阻止すべく手を尽くす警務部との
緊迫感溢れるストーリー展開に加えて
愛憎渦巻く男女の恋愛模様が織り込まれ
重厚な物語に仕上がっています

スリリングなポリティカルサスペンスの
秀作になるだけの題材ですが…
吉永小百合の起用が裏目に出てしまったか
渡瀬と山本との歪な三角関係にスポットを
当て過ぎた印象が拭えず緊迫感が途切れた
結果になったかも?
そうなってしまうと他の全てのシーンが
空回りしてるように感じられ2時間少々の
上映時間が長〜く思えてしまう負の連鎖に
ハマって何もかもが単調に見えちゃうね
熱い正義感が次第に狂気へと変わるシーン
渡瀬恒彦の熱演も虚しく感じる始末です。