てっきりドキュメンタリーと思っていたら、ドラマだった。
しかも、1時間半、コンパクトにまとまっていてなかなか良かった。

臓器移植に関するドラマで、誰が臓器提供を受ける側になるかを決める病院内の委員会の話。
病院モノドラマでもよく扱われる内容なので、テレビでいいだろ、って話ですが、委員会の中の人間関係とか病院内ポリティクスが描かれている。

この、臓器移植委員会のメンバーであるボクサー医師（K.グラマー）は同僚医師のジョーダン（J.スタイルス）とこっそり付き合っているが、あと一か月でもっとお金儲けも研究もできる営利団体への転職が決まっている。
ある日、交通事故死から移植可能な臓器が上がってきて、ボクサーの後任メンバーとして参加し始めたジョーダンも含め、心臓の行方が議論されるが・・・

この院内委員会って、患者の名前を出してあれやこれや言うもんなの？
確かに、受け手の病歴や健康状態が重要な要素にはなると思うが、患者A,患者B、じゃなくて実名でやり取りされている！
しかも、病歴だけじゃなく、退院後の環境や犯罪歴、周囲の人間の状況までもが合否判定の要素になってる！
確かに、自殺願望のある人間や、退院後、ホームレスになるような住環境の患者に新しい臓器あげてもなあ、ってのはわからないでもないが・・・。

候補者は3人で、一人は精神疾患で肥満だが周囲のサポートが充実している黒人、一人は臓器移植に懐疑的なおばさん、そしてもう一人は、ヤク中が疑われるが病院の金づるオヤジのドラ息子。
金づるオヤジは息子に移植をしろ！と牧師の刺客（！）と寄付をちらつかせる。やり方は汚いが、確かにその寄付金によって助かる他の患者があるのも事実。委員会のメンバーの病院経営者はこのドラ息子「推し」。
黒人に移植したいメンバーは、ドラ息子が移植対象から外れる「ヤク中」であることを立証したい・・・。

この、2014年の移植委員会の進展が、臓器の鮮度という期限をもって進行するのと同時に、7年後、民間に行ったボクサーのその後やジョーダンの家族の話と並行して描かれている。
ボクサーは豚やサルからの人間への臓器移植研究の第一人者として成功しているが、同時に、民間企業であるが故のプレッシャー（金になるかならないか）と闘い、かつ、皮肉なことに余命いくばくもないことがわかっており・・・。

元は舞台作品であったようで、道理で登場人物が少ない。
が、セリフは思ったほど説明調ではないし、現在と7年前もわかりやすく描かれている。
エンディングが甘い、というか、綺麗にまとめやがって、って気がしないでもないが、久々に寝落ちしない映画で良かった。
それにしても、臓器移植って思った以上に私情の入る余地があるんだなってびっくり。名前なんかばらしたら、医者にだって人種差別的な思想はあるだろうから、公平に判断できないよねえ、と思うが。