tomohitooguro

X エックスのtomohitooguroのネタバレレビュー・内容・結末

X エックス(2022年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

ホラーは苦手だけどA24だし、ということで観たら面白かった。洒落た構図が多いし音楽も良かったし。エロは仕方ないがあんま乳首は出さんで欲しいのよね。まあ今作のテーマなら仕方ないか。

映画のこと書く前に備忘録として自分が経験したことを書いておく。自分が観た劇場はトーホーシネマズなのだが水曜日の1200円で観られるサービスデイだったということもあり結構お客さんが多かった。びっくりしたのは高齢者が多かったことだ。この映画って高齢者に向かないだろうと思っていたので大丈夫かなーなんて心配していた。そこへ70オーバーであろう老人4人組が前の方のど真ん中に座った。男性1人と女性が3人のグループだった。男性は大きい声で欠伸したりするような(映画館における)老害タイプの人だった。予告編が始まってもうるさくしていたその老人に対して、真後ろの席の男性が「うるせえな」と独り言の様に呟いた。僕の前に座っていたアベックは拍手する真似をしていた。確かに劇場マナーは大切。しかしその老人はそれでもたまにわざとらしくため息混じりの欠伸をしていて、もう僕は喧嘩が起きるんじゃないかと映画中ずっとヒヤヒヤしていた。ただでさえホラーが苦手だしSEXシーンも全然のれないのに、もう一つのヒヤヒヤする要素が加わって凄い映画体験をしてしまった。やっぱ映画館で観るって大切だなと実感した。多少は集中力を持っていかれたがいい経験をしたなと思う。注意した男性はエンドクレジットの途中で退出していた。エンドクレジットが始まると老人4人組は感想を話し出していた。女性陣も(映画館における)老害性をもっていたのだ。さすがにこれにはイラついたがポストクレジットでの次回作の予告が素晴らしすぎたのと、あまりに楽しそうに感想を喋っていたので最終的には微笑ましかった。

ここから映画の感想。
A24という最強のフィルターがかかった鑑賞であることは十分自覚しているが、細かいディテールが洒落ていた。年代表記のフォントやシーン切り替えのモーションが印象的だった。また登場人物達が撮影しているポルノ映画の映像がストーリー中に効果的に挿入されていた。
良いと思ったシーンは冒頭の牛の死体。この映画のスプラッター度やアート寄りのホラーであることを示唆してくるかなり印象的な映だった。またマキシーンが湖に入っているところを真上から撮りワニに知らずのうちにつけられているという映像はとても素晴らしかった。マキシーンの素肌にサロペットというファッションがセクシャルな面を別にしてめちゃくちゃかっこいいと思った。
ホラーとしてはB級感があった。つまりはあまり恐くはなかった。ホラーが苦手な自分にはそこが良かったのだが、生粋のホラー好きには物足りないだろうなと思う。
劇中劇としてポルノ撮影が出てくるが、嫌でもメタ的な見方をしてしまうし意識的にメタ的表現がされていたと思う。視聴者として映画「X」を鑑賞している我々と作中で撮影しているポルノ映画をほとんど同じものとして言及しているシーンがいくつかあったし、ラストシーンで警官が放ったセリフでも彼らが撮影したポルノがそのままホラー映画「X」とイコールに感じる様な工夫がされていて好きな表現だった。

今作の殺人鬼である老夫婦ついては意図的に醜く描かれており、その醜い風態の彼らに性欲という衣装を纏わせることでその醜さを強調していた。しかもこれは若者達の性欲と対比されていた様に感じた。老人が性欲全開でキモいというのが一般的な意見だろう。しかし自分はその見方はかなり危険だと思う。多様性の時代と言われている現代では高齢者の性欲も受け入れるべき対象だろうと思う。ただし殺人は絶対にダメなので今作の設定は映画として秀逸だったと思う。高齢者のSEXを決して奇異なものとして語ってはいけないはずだが、殺人鬼というレッテルが貼られた完全に同調不可の高齢者であったことから今作は成立していた。

ラストシーンで殺人鬼の頭を轢き潰したマキシーン。ああここでタバコ吸ったら絵になるなあと思ったらコカイン吸ってて想像の斜め上をいかれてマジで良かったです。
tomohitooguro

tomohitooguro