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X エックスのrensaurusのレビュー・感想・評価

X エックス(2022年製作の映画)
4.0
リビドーの暴走が恐ろしいホラー映画!
老婆が恐くて醜くて気持ち悪いけど、心情を思うと哀れみと虚しさを感じざるを得ない。ラストは衝撃的な気持ち良さで大興奮だったが、やはりやり場のない感情が残る。さすがはA24。

ビジュアルは、エログロのインパクトや、爽快なスラッシャーはもちろん、aestheticな画面が美しい。独特なカットチェンジを使ったり、似たような状況を対比して見せたりと演出にも新しさと面白みがあった。ラストにかけてテンポが速くなっていくのもカタルシスに寄与している。

特別になれぬまま老衰し、誰からももう求められることはないという無常で非情な恐怖が作品を通して感じられ、逃げ場がない切迫感があった。

加えて、敬虔なキリスト教徒であればあるほどリビドーを抑圧してしまい、耐えられなくなった時にはもう遅く、あらぬ方向に暴走してしまう。こんなに恐ろしいことはない。劇中の宗教演説を行う牧師(?)の娘がミア・ゴスで、『悪魔の手に渡った』というのも意味ありげである。

老夫婦が憎いほど憧れる若々しい肉体を持ってしても、『特別になりたい』『純潔でいなくては』とリビドーと抑圧は避けられない。

マキシーンとパールはどちらもミア・ゴスが演じており、パールが度々「あの子は私に似ている」「あの子は特別」と言うように、通じる部分があり、マキシーンもいずれパールになりかねない人間なのだ。あぁやっぱり恐ろしい。

70年代の向上心のある音楽も最高で、ホラーを際立てる良いスパイスだった。続編も楽しみ。
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