Soseki

優雅なインドの国々 バロック meets ストリートダンスのSosekiのレビュー・感想・評価

3.8
ラモー「優雅なインドの国々」は1735年作曲のバロックオペラ。パリオペラ座での2019年9月の上演は、演出でヒップホップ、クランプ、ブレイクダンスなどのストリートダンスを取り入れ、斬新さで話題になったらしい。その初日までの舞台裏を映すドキュメンタリー。

ダンサー達のバックグラウンドは多様だが、有色人種が主で、これまでクラシック、オペラとは縁がない者が多数。そんな彼らが「未開の人々」のダンスを踊るという演出。オペラの本筋はラブストーリー。全体としてはどんなだったんだろう?

ラモーの時代、西洋は未開の国々を征服し、植民地を拡げていった。それを讃えるセリフにダンサー達は疑問を呈する。一方で、同じ芸術家として、指揮者や歌手、音楽に対するリスペクトも見せる。そして、練習が終わると、ラモーのフレーズを自由にアレンジしたダンスが始まり、その楽しく生き生きとした様を見ると、振り付けられたオペラの舞台より、やはりこちらが彼らの本領だよなあと、少々複雑な気分に。

普通にバックステージ物としての面白さもあって、オペラ座が一つの舞台を作り上げるまでに、これだけ多くの人が関わり、時間をかけているんだなという感慨も。オペラ好きには一見の価値あり。

ドキュメンタリー冒頭、ダンサー達はバスティーユ劇場でオペラを見る。その時、いきなり声をかけてくる白人女性がいて、上から目線の言動がまあまあ失礼なのであった。しかしその視点が通奏低音のように作中を流れているようにも感じる。

銀座エルメス・ル・ステュディオにて。
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