近本光司

ベナジルに捧げる3つの歌の近本光司のレビュー・感想・評価

ベナジルに捧げる3つの歌(2021年製作の映画)
3.0
カブールの難民キャンプの上空にはいつも米軍が打ち上げた白い気球が浮かんでいる。気球にはカメラが搭載され、キャンプの住人たちの暮らしが監視しているのだという。そうした監視下で、被写体となった青年は恋人へと歌をうたい、子どもをつくり、未来への希望を辛うじて繋ぎとめようとする。彼は内戦によって10才のころに故郷を追われ、教育を受ける機会を失った。学校にいきたいと父に訴えるも、お前は学校なんぞ見たことないだろう、そんな人間はケシの収穫でもしていればいいとあしらわれてしまう。ならば軍隊に入りたいと告げるも、タリバンに殺されるのがオチだと認めてもらえない。八方塞がりの人生の果てに、彼はアヘンの中毒者となり、やがて家族と離れて更生者施設に送られることとなる。ひじょうにシンプルで、力づよいドキュメント。定かではないのだが、この四年の月日のうちに、妻が身につけるスカーフの面積が増えていたように見えた。世界各地でさらなるイスラーム化が急速に進んでいるというが、おそらくアフガニスタンでもまたそうなのだろう。ところで国際社会はウクライナを支援したが、アフガニスタンのことは依然として見棄てたままである。