近本光司さんの映画レビュー・感想・評価

近本光司

近本光司

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続・少林寺三十六房(1980年製作の映画)

2.5

布染めの工房ではたらく労働者からいいように都合をつけて搾取しようとする資本家たち。人びとは力をあわせて権力に抗おうとする。ああ、これは香港カンフーならではの労働組合ストの寓話なのかと、冒頭のシークエン>>続きを読む

沈黙 SILENCE(1971年製作の映画)

3.5

隠れ切支丹たちはどうして踏み絵を踏まなかったのか、みずからの生を擲ってまですがった信仰とはいったいなんなのか。その裏側には死や懲罰を恐れてやすやすと転んでしまった者はどのように以後の生を生きたかという>>続きを読む

とむらい師たち(1968年製作の映画)

4.5

がっはっは! はじめから完全にトチ狂ったまま最後まで疾走してゆく。野坂昭如の原作が三隅研次の美学をもってあざやかに料理される。葬儀ビジネスでひと儲けを企てる輩たちという危うい話だが、倫理の堤防が決壊す>>続きを読む

偽れる盛装(1951年製作の映画)

3.5

二人は町を見下ろしながら、ほかの街とちがって、京都は爆撃を免れたから旧い価値観が残ってしまったのよ、と言ってのける。京都人はいつの時代もこわい。

西陣の姉妹(1952年製作の映画)

4.5

時代は移ろい、やがて西陣の名家も没落する。冒頭のピストルの発砲音によって開始されたその没落は、死にたまふ母と看取る家族たち(父の遺影も)が解体されてゆく家の音を聞き届けることによって完成する。そのあい>>続きを読む

The Second Act(英題)(2024年製作の映画)

3.5

ルイ・ガレルとラファエル・クナールがしゃべりながら並んで歩いている姿を斜め前から捉えた仰角の移動ショット。すると二人は唐突に第四の壁を突き破ってくる。おい、観客が見てるんだからバカなことを言うんじゃね>>続きを読む

関心領域(2023年製作の映画)

4.0

映画が好きな友だちといつものように最近観た映画の感想を言いあっていて、わたしがこの作品のタイトルを口にした瞬間に、彼女は真顔になって「それについては他人と話したくない、わたしの恥ずべき家系の歴史そのも>>続きを読む

Hors du temps(原題)(2024年製作の映画)

2.0

ブルジョワジーの(秘かな)愉しみ。2020年、ウイルスの蔓延によって外出禁止令が出されたフランスで、アサイヤスは兄と恋人たちの男女四人で、幼少期を過ごした田舎の家で想定外の共同生活を送ることになる。ブ>>続きを読む

ゴジラ対メガロ(1973年製作の映画)

2.5

遥かむかしに一度観たことがあった。そのことに気づいたのは、外から二階にのぼる階段の伸びたラボの建物を観たとき。ほかのシーンはほとんど憶えていなかった。われながら奇妙なところを覚えているもんだ。記憶とは>>続きを読む

地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン(1972年製作の映画)

3.0

「完全な平和」を標榜する宇宙ゴキブリの差金でキングギドラとガイガンに襲われて窮地に陥った人類を救うべく、怪獣ランドから海をわたってくるゴジラとアンギラス。お喋りに興じながら(吹出し!)のろのろ泳いでく>>続きを読む

怪獣総進撃(1968年製作の映画)

2.0

ゴジラが生まれてから14年。一時代を築きあげた東宝怪獣映画シリーズが行き詰まりを迎えていたことは『怪獣総進撃』を観ればよくわかる。人間の管理下に置かれた「怪獣ランド」から逃げだした怪獣たちが世界中の大>>続きを読む

モスラ(1961年製作の映画)

3.5

水爆実験を繰り返す「ロリシカ国」に、折れた東京タワーで孵化したモスラの旋回によって破壊される「ニューカーク」。アメリカによる占領が終わってから十年足らず、まるでフィクションをつうじて日本人が米国に復讐>>続きを読む

フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ(1966年製作の映画)

3.0

海からあらわれた緑色の毛を生やしたガイラは、ほかのどの怪獣よりも人間を深く憎んでいるように見える。人間を喰い、迎撃する戦車をひろいあげては山間の古民家を狙って投げつける。一方の黄色の毛を生やしたサンダ>>続きを読む

空の大怪獣 ラドン(1956年製作の映画)

3.5

阿蘇山を棲家にする怪獣を駆逐するべく撃ち込んだミサイルは火山の噴火を誘発する。九州の都市を灰燼に帰した二頭のラドンは阿蘇山から燃えさかるマグマに呑み込まれて絶命する。太古から甦った生物の死。その死を望>>続きを読む

キングコング対ゴジラ(1962年製作の映画)

2.5

「ねえ、ゴジラとキングコングはどっちが強いのかしら?」「ばか、レスリングじゃねえんだから」「そのアイデア買った!」視聴率低迷を打開しようとする製薬会社が日米の雌雄対決という一大スペクタクルを企画する。>>続きを読む

ゴジラの逆襲(1955年製作の映画)

3.0

「わたしたちの愛する大阪の街も、世界に誇る大阪城も、ゴジラのためにまったく踏み躙られてしまいました。ひとたびゴジラが暴れ狂うとき、わたしたちはまったく無力であります」。まるでレスリングの試合かのような>>続きを読む

ゴジラ(1954年製作の映画)

4.0

ゴジラの吐く熱戦で火の海になった東京の路傍で死を覚悟した母は、胸もとの幼き子供たちに「もうすぐお父ちゃまのところにいくのよ」と語りかける。彼女の語るところの父は、おそらくはさきの大戦で歿したという設定>>続きを読む

時の崖(1980年製作の映画)

4.0

いやはや、これはちょっとすごい作品です 褒めるならこっち

仔象は死んだ(1980年製作の映画)

2.5

どうして淀川長治が当時はあれだけ興奮を隠しきれなかったのかと、それから四十年以上の時が過ぎたいまに思う。かつて前衛芸術が信じられていた時代があったのだ。その感覚はとてつもなく遠い。

白い朝(1965年製作の映画)

3.0

シナリオ読んではじめて筋立てを理解 そんなフィルムを切り刻んでたのしいですか? そうですか…。

詩人の生涯(1974年製作の映画)

3.5

川本喜八郎にはもっと安部公房原作を手がけてほしかった

他人の顔(1966年製作の映画)

3.5

原作の手ざわりからはまさか主人公の妻に京マチ子が配役されるなんて想像もつかない。ここは気を衒わずに田中絹代でしょうよ、ちょっと京マチ子は色っぽすぎてだなあ。安部先生、そこはどうなんですかね、と訊いてみ>>続きを読む

おとし穴(1962年製作の映画)

4.0

おらはなあ、生まれ変わったら労働組合っちゅうもんがあるとこで働いて、あの汚ねえ会社の連中に一杯食わせてやりてえんだ。あるときそんな夢を語った男は、訳のわからないままに見知らぬ者に突然追わされて殺されて>>続きを読む

地上の詩(2023年製作の映画)

4.0

現代のテヘランで公権力に翻弄される市井の人びとを描いたクロニクル。役所の係員から新生児の命名受理を拒否される父親。小学校の入学式に着るためのチャドルを嫌々試着する少女。男子といた姿を目撃され校長室で説>>続きを読む

オトン(1969年製作の映画)

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コルネイユのテクストが一切の感情を抜いた早口の棒読みで発話されていく。はじめはがんばって科白を聞き取ろうとしていたが、次第にそんな気概も薄れてきて、役者たちによる発話の異なるリズムに身を委ねることにし>>続きを読む

Bye Bye Tiberias(英題)(2023年製作の映画)

3.5

パレスチナに生きる女性たちの四代にわたる年代記。アラブ映画祭にて。

ちいさこべ 第一部(1962年製作の映画)

4.5

観客のひとりからヴィクトル・ユーゴを思いだしたといわれて、なるほどと腑に落ちた。確かにユーゴの小説は山本周五郎のヒューマニズムの源泉かもしれない。都合三度ほど観たのだが、江利チエミと子どもたちによる人>>続きを読む

五重搭(1944年製作の映画)

4.0

幸田露伴の原作に接近できたことがなによりもよかった。しかし原作のモデルとなった谷中の五重塔は、江戸の建立から二十世紀も関東大震災と東京大空襲という災厄を奇蹟的に無傷で乗り越えたにもかかわらず、1957>>続きを読む

法隆寺(1958年製作の映画)

4.5

この作品を上映したことがきっかけとなり、二十年振りに法隆寺を訪れた。その訪問を経て本作を見直すと、カメラワークの卓越はさることながら、いかに構成が優れているかと思い至る。三百人が詰めかけた満員のホール>>続きを読む

怪物(2023年製作の映画)

4.5

えーっ、めっちゃいいじゃん。みんなだめなの?

魔女(1922年製作の映画)

4.0

シネマテーク・フランセーズのホラー映画史特集にて、Dagerlöff & Galner というエレクトロデュオの生演奏付き上映。とにかく音楽がすばらしく、これほどあざやかに百年前の映画に息を吹きこむこ>>続きを読む

東海道四谷怪談(1959年製作の映画)

3.0

冒頭のシークエンスは見ものだった。思いを寄せる女との結婚を認めてもらうべく、夜半の暗がりでその父を待ち伏せる伊右衛門(天知茂)。貴様の如き分際でと取り合おうとしない父に腹を立てた彼はひと思いに斬ってし>>続きを読む