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マイ・ブロークン・マリコのjunのレビュー・感想・評価

マイ・ブロークン・マリコ(2022年製作の映画)
3.5
ある日突然なにも言わずにこの世界からいなくなってしまった親友『マリコ』
主人公『シイノ』は彼女の遺骨を父親から奪い生前行きたがっていたまりがおか岬へと弔いの旅に出ます。

友達同士のロードムービーはよくありますがその相手が“遺骨”というのは初めて目にする設定でした。
同性の私から見ても少々面倒臭いメンヘラ気質だったマリコ。
その背景には幼少期からの実の父親による身体的、精神的、性的虐待がありました。
シイノが遺骨を父親から奪った際、『高校生の時っ…‼︎』というセリフと共に包丁を突きつける場面。永野芽郁ちゃんの迫真の演技に胸を打たれました。
いつもはふわふわしたイメージの芽郁ちゃんですが声の低さやタバコを吸う仕草、やさぐれた感じが出ていてしっかり役作りされたんだなと思いました。

マリコはいつもヘラヘラ笑っていたけど幼少期に母を奪われ暴力を振るわれどんなに辛かったんだろう。誰かに悩みは相談できても受けた痛みが減ることはないだろうし、どんなに心を開いた親友でも立場を代わってあげることはできないし気持ちを理解しているつもりでも本当の辛さは本人にしかわからない。
その孤独に耐えられなくなったら人間は案外あっさり生きることをやめてしまうのかもしれません。


原作ではマリコの最後の日として飛び降りる直前ベランダにやってきた小鳥たちに優しく微笑んでパン屑を与える描写が描かれているとありました。

元々弱っていた所にたまたまそういうタイミングが来てふらっと飛び降りてしまったのかもしれない…
真相は本人にしか分かりませんが誰もが持つ人間の弱さについて深く考えさせられる作品でした。

ストーリーは至ってシンプルで、実の父からの虐待により自死という暗いテーマではありますが途中出てくる優しい釣り人の窪田くんや常識のある義母の吉田羊さんの存在が一筋の光のように感じて観ていて辛くなる気持ちを和らげてくれるような気がしました。


最後の手紙にはなんと書いてあったのか明かされませんでしたがシイノのあのクスッと笑う明るい表情からなんて事ないいつも通りのことが書かれていたのかもしれませんね。

そうなると本当に自死だったのかなー…
とも考えてしまいましたが。
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