千年女優

コール・ジェーン ー女性たちの秘密の電話ーの千年女優のレビュー・感想・評価

3.5
60年代末のシカゴ。夫との間に二人目の子を授かった専業主婦で、妊娠を喜んだのも束の間うっ血性心不全の発覚で命の危険を告げられたジョイ。中絶が法的に禁じられて病院の理事会からも承認を得られず途方に暮れる彼女が、秘密裏に中絶を行う女性団体「ジェーン」に助けを求めてやがてその活動に深く関わる様を描いたドラマ映画です。

ニューヨーク生まれでロンドンの演劇界でキャリアを積み重ねた女性監督のフィリス・ナジーが、1973年の人工中絶を認める合衆国最高裁判所の判決に向けてのムーブメントに一役買った実在した女性団体をエリザベス・バンクスの主演で描いた作品で、保守派の勢いが強まる世情にNOを掲げる物語が批評家達からの肯定的な意見を集めました。

シリアスな題材ながら颯爽とした「女性の強さ」を押し出す作風で、一種のスパイ映画のような軽快さで溌剌とさせる一方で使命感の余り些か肩肘張ったものを感じるところはあります。それでもトランプの大統領就任をきっかけに最高裁判事が49年を経て決定を覆した2022年に忘れられていた当時の「想い」で対抗するタイムリーな一作です。
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