ぶみ

コール・ジェーン ー女性たちの秘密の電話ーのぶみのレビュー・感想・評価

3.0
わたしの身体か、胎児のいのちか、自由に選択できないわたしたち。

フィリス・ナジー監督、脚本、エリザベス・バンクス主演による実話をベースとしたドラマ。
1968年、中絶が法律で許されていない時代のアメリカで、女性の権利を得ようと立ち上がった主人公等の姿を描く。
主人公となるジョイ・グリフィンをバンクス、違法ながら中絶手術を行う団体「ジェーン」のリーダー・バージニアをシガニー・ウィーバー、ジョイの夫をクリス・メッシーナが演じているほか、ウンミ・モサク、ケイト・マーラ等が登場。
物語は、1960年代後半のアメリカ・シカゴを舞台として、妊娠によって心臓の病気が悪化してしまった主人公が中絶を申し出るものの、中絶が許されていなかったことから、アンダーグラウンドな団体「ジェーン」に助けを求めるシーンでスタートするのだが、恥ずかしながら、そのような法律となっていたこと、また、その中絶が違法だった1960年代後半から70年代初頭にかけて、ジェーンなる団体が、推定12,000人の中絶を手助けしたと言われていることに関しては、本作品で初めて知った次第。
そんな、自分の命と子どもの命との間で揺れ動く夫婦をバンクスとメッシーナが好演しており、どちらの立場もそれぞれ理解できるもの。
そんな中、何度となく中絶を施術するシーンが登場し、もちろん直接的な表現はないものの、これがなかなかリアリティに溢れており、男性である私でも、その痛みというか感触を想像してしまったため、観ていて何とも言えないモゾモゾ感が半端ない。
映画作品として見ると、時折長回しがあるが、特徴的なカメラワークや演出があるわけではなく、また、実話ベースであるが故にド派手なシーンがあるわけでもないため、非常にオーソドックスな仕上がりとなっている。
加えて、ジョイの親友のラナを演じているのがルーニー・マーラの姉であるケイト・マーラであり、久々に見たものの、その演技力は健在であるし、長髪であったため、途中まで気づかなかったのだが、ウィーバーが良い味を出していたのもポイント。
クルマ好きの視点からすると、60年代から70年代にかけての、ザ・アメ車とも言えるようなクルマのオンパレードだったのは見どころの一つ。
男性の私から考えると、明らかに男性が作った法律のもと、男性優位な社会に振り回される女性の生きづらさは、想像を遥かに超えたものであるのだろうが、それを踏まえて未来を描くのが、今を生きるものの使命であることを過去から紐解くことができる内容であるとともに、公開初日であるにも関わらず、貸切上映だったのが、素直に喜んで良いのかどうか微妙な気持ちになった一作。

妻を泣かせる男になりたくない。
ぶみ

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