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コール・ジェーン ー女性たちの秘密の電話ーのMasterYuのレビュー・感想・評価

3.3
1968年、アメリカのシカゴ。
弁護士の夫と15歳の娘と幸せな生活を送っていたジョイであったが、2人目の妊娠が原因で心臓の病気が悪化。
唯一の治療法は中絶することと担当医に言われるが、病院の男性役員たちは全会一致で中絶反対。
どうにか中絶する方法はないかと悩むジョイは、町で偶然見かけた貼り紙にあった番号に電話を掛ける。そこはアングラで中絶手術を提供する「ジェーン」という団体であった・・・。

妊娠中絶が違法とされた時代に、実在した団体「ジェーン」は、推定12,000人の中絶に関わったと言われているそうです。

2022年12月に劇場鑑賞した「あのこと」では、本作と同年代のフランスを舞台にした、どうにか中絶しようとするある女子大学生の姿を描き、2023年8月に劇場鑑賞した「シモーヌ フランスに最も愛された政治家」では、1975年に人工妊娠中絶を合法化したヴェイユ法を勝ち取ったシモーヌ・ヴェイユの生涯を描いていましたが、こうした中絶が違法だった時代の話は、身勝手な男性優位の胸糞悪さが際立っていて本当に心苦しい。

本作で取り上げられる団体「ジェーン」の活動は、1973年の「ロー対ウェイド」判決に繋がるわけですけど、2022年にトランプの息のかかった保守系判事が蔓延る連邦最高裁が憲法上の中絶の保障を否定した(ドブス判決)ことで、各州独自で中絶を禁止できるようになってしまいました。

ジョイが民主党に票を入れる云々という話をしていて、それに対して隣人のラナが「民主党に?」と驚いているシーンがありましたが、バイデンとトランプの大統領選は、中絶を女性の権利とする民主党と、それに対する共和党という構図もあるので、本作は間違いなくそうしたことを意識させられることでしょう。

作品としては、とてもベーシックに作られているという感じで、演出構成にこれと言って印象に残るところはなかったものの、重い題材をライトに描写しているところは共感を生むと思うし、エリザベス・バンクスとシガニー・ウィーバーの好演が光ります。

「ロキ」のハンターB-15を演じていたウンミ・モサクを、スクリーンでちゃんと認識したのは本作が初めてかも?
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