Omizu

Alcarràs(原題)のOmizuのレビュー・感想・評価

Alcarràs(原題)(2022年製作の映画)
4.0
【第72回ベルリン映画祭 金熊賞】
『悲しみに、こんにちは』で大評判となったスペインのカルラ・シモン監督作品。ベルリン映画祭では最高賞を受賞、アカデミー賞スペイン代表にも選出されたがノミネートはされなかった。

一向に公開される気配がないので英語字幕で鑑賞。日本の映画祭での上映もなかったからどこかが買ってるんだとは思うんだが…kinoか?

アルカラズという土地で果樹園を営む一家だが、ソーラーパネルを設置する業者に買収されてしまうことになり、一家の心はバラバラになっていく…

黄色みがかった撮影は素晴らしく、とりわけ子供を映すのがやはり抜群に上手い。大人たちが離散していくのに気がつかず遊んでいるのだが、図らずも大人の反映が垣間見える。

ただ、他の方もレビューで書いているとおり、家族それぞれを割と平等に描くため視点が一定しない印象を受ける。それぞれの描写はすごくいいのだがそれがまとまって見えない。

失われゆく第一次産業、家族それぞれの思惑の違いを美しく捉えているとは思う。子どもたちもさることながら、大麻をこっそり育てる青年の描写が心に残った。

みんなそれぞれの考えがあって、なんとか平静を保とうとしている。しかし些細なことで均衡は崩れてしまう。その危うさをこそ描きたいのだろう。だからこそ一つの視点に絞らなかったのだと思う。

確かにまとまりは悪いとは思うが、これはこれでカルラ・シモンらしくていいと思う。何よりロケーションが素晴らしい。全てが絵になるようなスペインらしい美しさが溢れている。
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