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天国と大地の間でのshunのレビュー・感想・評価

天国と大地の間で(2019年製作の映画)
4.9
今ヨルダンに留学しているのですが、こっちのネトフリを使って日本ではなかなか観れない作品を観ていきたいと思ってこちらの作品を選択。

簡単に言うとパレスチナ人夫婦が離婚の書類を完成させるため夫の父親の来歴を辿ってイスラエルを巡るロードムービーです。

ただ、この90数分の間にこの地域が抱える問題が詰まっていて非常に複雑でした。

まず、妻サルマの家族はイスラエルに留まったパレスチナ人で彼女の父親は共産主義者。イスラエルの市民権はあるが社会的差別を受けている。
夫ターメルの父親はベイルートでイスラエル側に殺された。その元恋人(ターメルの義母)ハジャルはイラク育ちのユダヤ系アラブ人。息子タミールを取り戻すために寝返り元夫(ターメルの父)を売る。これによってターメルは両親を失うこととなる。
一方タミールは攫われたあと死を偽装されユダヤの家庭に与えられたためヘブライ語しか話せない。

車で旅をするサルマとターメルは少しずつ自分達の出自や両親の出自、イスラエルやアラブ諸国の歴史と現状に向き合っていくこととになる。
その道中で出会う人々もまた興味深い。
ゴラン高原に住むシリア系の女性はイスラエル市民権と住所を拒否し生きるレジスタンス。
他にもアラビア語が話せるユダヤ人の老人も登場する。彼の「ユダヤもアラブもきょうだい」ってセリフが印象的。
あと少しコミカルだったのはフランスからの旅行者夫婦。車が壊れて乗せてくれないかと言い、強引に車に乗ってきたかと思えばずっと後ろで夫婦喧嘩。と思ったら次の瞬間にはアツいキスをしてる。なんだか面白かった。

非常に複雑な問題を90分にまとめ「離婚したい夫婦のロードムービー」として成立させ、音楽や情景も美しい。
もっと評価されていい映画だと思う。

役所で彼らの順番待ちの番号、67と48も意味があるのね。1967年と1948年
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