あべきょ

マーターズのあべきょのネタバレレビュー・内容・結末

マーターズ(2007年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

賛否両論あるが、グロ・胸糞耐性があれば、考察しがいがあり十分楽しめる作品。(グロ描写自体を楽しむという意味ではなく)

考察の論点はいくつかあるが、主に以下の3つになるだろう。
(1)なぜリュシーは自ら首を切ったか
(2)アンナがマドモアゼルに伝えた内容
(3)「疑いなさい」の意味

(1)なぜリュシーは自ら首を切ったか
鑑賞時は、復讐を終えたにも関わらずトラウマの幻影="彼女"から逃れることが出来ないことへの絶望ゆえだと思っていた。

だが、他のレビューや考察を読んだ上では、脱走後の人生を共に歩んできたアンナがもはや自分を信じてくれなくなったことへの絶望ゆえ、という方が納得できる気がしている。

(2)アンナがマドモアゼルに伝えた内容
おそらく今作最大の謎であり、様々な考察が存在するが、前後の脈絡と整合性が取れるような解釈がなくモヤモヤしている。
個人的には、タイトル の語源「証人」にならって、リュシーはアンナの証人、マドモアゼルはリュシーの証人として死後の世界で何らかの優遇?があることを伝えたのでは?と考えたが、臨死体験でそんな事まで分かるとは思えず、この解釈も違う気がしている。

(3)「疑いなさい」の意味
ラストシーンで自殺する直前、マドモアゼルが組織職員に言ったこの言葉の意味だが、ここは(2)の解釈にリンクする部分。
大事なのは、「何を」疑うのかという目的語のところだが、直前の会話から素直に考えれば「死後の世界に何があるか?」を疑うということになるので、あまり死後に期待するなよということなのだろうか。(仮にも彼らは大量の人間に虐待・殺人の罪を犯しているわけなので)
ただ、死後の世界での処遇に絶望したというだけであれば、化粧を落としてわざわざスピーチ前に自殺する必要があるだろうか?「早く死ぬ」ことを目指すなら、アンナから何かを聞いた直後のはずだが、組織のスポンサー方をわざわざ施設まで呼びつけておき、彼らに死後の世界についてスピーチをする段取りまで組んだ上で計画的に自殺しているように見えるのが不可解だ。この自殺のタイミングが最も解釈をややこしくしているかもしれない。


以上のように、グロ描写・胸糞展開に高い耐性があれば、終盤を巡る考察を楽しめる作品ではあった。ただ、納得のいく解釈は現状ないため釈然としないが、(もう一度見る元気もないので、)どこかで素晴らしく整合性の取れた解釈に出会えることを楽しみにしている。
(ハリウッド版の方はもっと分かりやすくチープだそうです。)
あべきょ

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