1995年の映画。パソコン通信で出会ったふたりの人のメールによる交流の映画。自分も生きた1995年世界は半分夢の中のような遠さであったが、懐かしくもあった。自分もそうした、掲示板への書き込みでの交流をしていたこと、そのときの感触が思い出された。
ふたりのやりとりはいつも短く、文体は、会話の言葉とも、たぶん手紙のそれとも違い、あたらしく出現したメールでだけあらわれる文体なのかもしれない。自分もたしか、そうした、初めての文体みたいなもので、顔の知らない誰かと独特な距離感でやりとりをしていた。
文章って、言葉って、時代によって変わる時代の言葉なのだとあらためて思った。妙な感想だけど、ああ、自分もたくさん生きてきたなあ、と、ふしぎな感慨をおぼえた。自分は自分だと思ってしまうが、時代という集合意識みたいなものの中でつくられている、全体の一部なのだろう。見終わった今、そういう静かな気持ちになっている。