かたゆき

ドント・ウォーリー・ダーリンのかたゆきのレビュー・感想・評価

3.0
砂漠のど真ん中に造られた、とある新興住宅地。ここは世界的な大企業が極秘裏に進めるプロジェクトのために建設された、完璧な町だ。
大きなスーパーマーケットや美容院、映画館も併設され、他のどの町に行かなくてもここだけで生活に必要なものは全て揃うようになっている。
定期的に巡行するバスに乗れば、町の何処にでも運んでくれる。
そう、ここは誰もが幸せに暮らせる楽園のような世界――。
プロジェクトに関わる夫ジャックとともに、何不自由ない生活を満喫する専業主婦アリス。
従業員以外は許可なく町を出ることは禁止というルールに疑問を抱くことなくこれまで暮らしてきたアリスは、毎朝夫を送り出し、ママ友たちと日々優雅な昼下がりを楽しんでいる。
自由な時間を楽しみたいとまだ子供を作る気もないアリス。
だが、迷子になった子供を捜すためにルールを破って町の外に出てしまった隣人主婦マーガレットの存在が彼女の気持ちをざわつかせる。
マーガレットの子供はいまだ行方不明のままで、彼女はそれからこの町に批判的な言動を繰り返しすようになっていた。
ある日、そんなマーガレットが自らの喉を切って自殺する瞬間を目撃してしまったアリスは、真実を探るために町の外へと逃げ出そうとするのだが……。

冒頭から描かれる、この冗談みたいな理想郷のカラフルで洗練されているのにどこか歪な世界観が強烈。
何処にもゴミ一つ落ちておらず、家の壁も汚れなど一切なし、部屋の中も全て掃除が行き届いている。
でも、主婦たちは料理以外の家事は全くせず、プールサイドで優雅にお酒を飲んで趣味のバレエにいそしみ、することと言えば夫と所かまわずセックス。
彼女たちはみな夫の言うことを全て鵜呑みにして、今の生活に何も疑問を抱かない。
そんな世界に響き渡る、何処までも陽気な音楽……。
ここまで気持ちの悪い世界を緻密に構築した、この監督の手腕は確かに凄い。
時折挟まれる悪夢的イメージも鮮烈で、生卵を割ってみたら中身がまったくの空だったなど印象に残るシーンも多い。

ただ、問題となるのはストーリー。
ここまで大風呂敷を拡げまくったお話をどうオチつけるのかと思っていたら、まさかの○○オチ。
これまで様々な映画や小説で何度も見てきたような既視感満載のその真相は、さすがに肩透かし感が半端なかったです。
こーゆー言ってみればなんでもありのオチは、よほど巧くやらないと納得感が得られませんって!!

また、全編に貫かれる、「全ての女性を家庭という牢獄に縛り付けようとする男社会の論理」への抵抗というフェミニズムなテーマも、最近はそんな映画が余りに多すぎてちょっと辟易。
なんなら説教臭ささえ感じました。
映像や世界観はすこぶる良かっただけに、残念!
かたゆき

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