かたゆき

終わらない週末のかたゆきのレビュー・感想・評価

終わらない週末(2023年製作の映画)
4.0
最近すっかり倦怠期に陥っているとある夫婦とその子供たち。
少しでも気分転換を図ろうと彼らはこの週末、リゾート地の豪華な別荘に予約を入れるのだった。
チェックインしたその別荘は大きなプールや広い寝室が備えられ、子供たちのテンションも自然に上がっていく。
早速水着に着替え、近くの浜辺に海水浴へと出かける家族たち――。
だが、彼らはすぐ異変に気づく。
謎のサイバー攻撃により街は大規模な停電に見舞われ、ネットやテレビも全て遮断されてしまったのだ。
さらには航行不能に陥った巨大タンカーが浜辺へと打ち寄せてきて、現場は大混乱に。
すぐさま別荘へと逃げ帰ってきた家族にさらなる不穏な訪問者が。
この別荘のオーナだという怪しい親子が、一晩この家に泊めてほしいとやって来たのだ。
はたして何が起こっているのか?
この訪問者は本当に別荘のオーナーなのか?
そして、家族は無事に週明けを迎えることが出来るのか?

まったく期待せずに観たらこれがめちゃ面白かったんですけど!
何がいいかって、とにかくこの全体を覆ういや~~~~~な空気。
ずっと気持ちが落ち着かないカメラワークに不穏な音楽、なにより登場人物全員が人を嫌な気持ちにさせる要素をちょっとずつ持ってるところ!
常にヒステリックで情緒不安定なお母さんにそんな妻に嫌気を差しつつも無気力に引き摺られちゃうお父さん、隣のエロいおねーちゃんの水着を携帯見るふりして盗撮しちゃうお兄ちゃん、ドラマ『フレンズ』の最終回を観ることだけが生きがいの妹……。
別に普通の家族なのになんでここまで人を不快にさせるんでしょうか。
途中から登場する、この民泊のオーナーの黒人親子もヤバい。
物腰は丁寧なのに絶対人を見下してるだろってことが丸わかりの父親、常に人を小馬鹿にするような皮肉ばかりのたまう娘。
この映画、とにかく人を不快にさせる作りが抜群に巧い。
監督、絶対性格悪いだろ(笑)。

そんなどっかで勝手にやってくれと言わんばかりの家族に徐々に世界の終末が迫ってくるわけだけど、これも絶妙に不安感を煽るもので大変グッド。
特にピンクのビラを大量に撒くドローンや急に歯がボロボロと抜けちゃうお兄ちゃんが強烈。
父親が途中で出会う、スペイン語しか話せないおばちゃんが自分はすんごく嫌でした。
困っているのは分かるけけど、ちょっと落ち着いてくれよっていう。
思わず置き去りにしちゃったイーサン・ホークの気持ちも分かる(笑)。
何気に自分の保身のために家に閉じこもってたケヴィン・ベーコン(懐かしい!)が一番まともに見えるという。

そして、ここまで大風呂敷を拡げといてどーオチつけるのかと思ったら、まさかのラスト!
いやー、妹ちゃん良かったね、願いが叶って(友情ってサイコーとか言ってられへんくらい世界はむちゃくちゃですけど…笑)。

ここまで人を不快にさせる作品ってある意味凄い。
なんだかアリ・アスターをも髣髴させるこの監督の才能は、これから要注目だわ。
かたゆき

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