エニグマ

胸騒ぎのエニグマのネタバレレビュー・内容・結末

胸騒ぎ(2022年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

デンマーク人の家族が旅先で出会ったのはオランダ人の家族。すっかり意気投合し、オランダ人一家の家で休暇を過ごすことに。しかし、所々にある違和感に「胸騒ぎ」を覚えるのであった。

郊外の家に招待されたらホスト側がヤバい奴らでした系ホラー。「ミッドサマー」や「イノセンツ」などの北欧ホラーの潮流である本作は、やはり陰湿な恐ろしさがある。
ベジタリアンって言ってんのに初っ端からイノシシ肉を出されたり、娘の寝床にどうぞと言われた場所は床だったり、シャワー入ってる時に勝手に入ってきたり、彼らの息子に対する虐待の兆候が見られたりと割と序盤から不穏なシーンが流れる。というか明るいシーンであっても劇伴が終始おどろおどろしい曲のため全然気が抜けない。しまいには夫婦の営みまで覗かれる始末。鑑賞中はかなりの居心地の悪さを感じる作品だった。
そして徐々にその違和感の正体が明らかになってくる。その夫婦は旅先で知り合った家族を同じように家に招いて子供を奪い、それを繰り返していたというのだ。彼らの息子の舌が無いのは病気などではなく口封じのため。そう考えると序盤で彼らの息子が主人公に口を大きく開けて切断された舌を見せてきたのも説明がつく。他にも、自分の娘でもないのにこちらの娘にオランダ語で指摘してくるオランダ人母の行動も、既に自分たちの物だと認識しているようで恐ろしい。

ただ、惜しい点も多い。主人公家族が逃げ出せるチャンスは何度かあった。1度目、うさぎの人形を忘れた(実は車の中にあった)時は、お互い言いたいことを言い合って雰囲気最悪だったのに残った。自分だったらあの時点で帰るけど、招かれた側としての気遣いもあるのだろう。そして2回目、オランダ人父が息子を怒鳴った時、あの時点で帰るべきだった。母親も怒りが収まらなかったのになぜ帰らない。そして3度目、父親がオランダ人息子の死体を発見し急いで帰ろうとする場面。流石に妻には真相を言え!そのせいで追ってきたオランダ人夫妻を怪しむこともなく妻は捕まる。妻もあんな変な家族に安心するなよ!夫もアイツらが来ても絶対ドアを開けるなとか言え!報連相!!
そして一家は見事に捕まり、娘は舌を切られ夫婦は採石場らしき場所へと連れてこられる。これは前半で叫んでも大丈夫なストレス発散場だよ〜と紹介された場所。裸の2人は抱き合いながら投石によって命を落とし、エンドロールへ。
夫婦は無抵抗でされるがままに殺され、何とも胸糞悪い終わり方だった。
似たようなジャンルであるシャマランの「ヴィジット」やジョーダンピールの「ゲットアウト」では、ゲスト側の反抗というもう一段階進んだ話でその駆け引きの面白さがあっただけに、今作の受け身具合には物足りなさを感じた。
犯人側に明確な理由付けをすると安っぽくなると言えど、せめて目的・理由匂わすくらいのことやらないと「何故子供を定期的に変えるのか?」「旅費はどうやって貯めているのか?」とか色々疑問は浮かぶ。簡単な考察としては、あの時期の子供にこだわりがあるため成長する前に別の子に変えるとかなんだけど、バックボーンが分からなすぎるな。子供も筆談で助けを求めるとかはできないのか?

鑑賞中は父親役がジェームズ・マカヴォイにしか見えなかったのだが、どうやらジェームズ・マカヴォイでリメイクするらしい笑 ただマカヴォイはホスト側の父親役であるが。リメイク版に期待したい。
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