かこじ

僕らの世界が交わるまでのかこじのレビュー・感想・評価

僕らの世界が交わるまで(2022年製作の映画)
5.0
次の映画まで時間が空いたので、何の気なしに暇つぶしに鑑賞。
これは大傑作!

DV家庭への駆け込み寺を運営する、意識高い系の母ジュリアン・ムーアと、Youtuberで音楽才能を発揮する息子のすれ違い。
大事件はないけど、個々の思いと押し付け、葛藤が、じわじわエスカレートする様は、エグイくらいに身に染みる。

母ジュリアン・ムーアは、意識高いリベラルの典型で、裕福で慈善事業に没頭し、時に押しつけがましく、まるでヒラリー・クリントン。
そして周囲に溶け込めていない。

一方、不自由なくに育った息子フィン・ウルフハードは、ピュアな歌を世界に届けるも、母や周囲に理解されない。
それでも、Z世代の若者らしく、政治活動に参加しようとする姿は、『今を生きる』を思わせる。

この映画に悪人はいない。
親子ともども、善意で一生懸命頑張ってるつもりなのに、やればやるほど周囲を遠ざけてしまう。
特に、ジュリアン・ムーアの善意の押し付けが痛々しく、「もうやめて!」と叫びたくなる。
自分も、意識高い系に酔う傾向なので、この辺の描写がググサグサ刺さる。

孤立する親子が辿り着く先は、それぞれが頑張ってきた証。
今まで外ばかり見て、無関心だった家族を見直す事で本当の理解者を得る癒し。
ジェシー・アイゼンバーグのシニカルな慧眼に感服した。

ジュリアン・ムーアは彼女しか考えられない名演。
息子役フィン・ウォルフハーは美形と繊細さで、第二のティモシー・シャラメになりそう。
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