このレビューはネタバレを含みます
死の間際に何を見出すか、という視点で、『本心を詩に綴ること』だったり『娘との絆を取り戻すこと』だったりといった人生のテーマみたいなものを同性愛と宗教信仰も絡めて描いた一作として受け取った。『誰も人を救うことはできない』『人生で一つでも正しかったと思えたことがほしい』という旨のセリフが一見は全体を包括しているようにも思うけれど、それが主題を成していると言い切れるような単純な作りではないように感じた。主人公の生き方、という軸はあれど、ならば彼をどういう存在として受け止めれば良いのかが僕には分からなかった。引用されている『白鯨』にとっての人生の抵抗の対象としてのクジラのような存在が奈辺にあったのか、咀嚼に時間を要する。良い作品だとは思うが、感情のやり場に困る物語でもあった。
