Eita

ザ・ホエールのEitaのレビュー・感想・評価

ザ・ホエール(2022年製作の映画)
4.8
アカデミー賞主演男優賞も納得のブレンダン・フレイザーの怪演。
ほぼ全編通して密室で繰り広げられ、アスペクト比によっても強調される複雑で屈折した人間模様。命がもうすぐ絶えるという切迫感と共に、まるで海上で出会う濃霧のようにむんとしたむさ苦しさと進むべき方角のわからない絶望を登場人物たちの間に演出し、衝突、座礁すれすれの航海に準えうる(ある種の)群像劇の行く先には、しかしそれぞれにとっての救いの光が確かに兆していた。どんな形であれ、暗い海底の一隅を照らす光であれば、つまり、「あれは醜悪と神秘を纏った『白鯨』だったのだ」と、それを忘れずにいて、それを正直に書き、あるいはそれを語り継ぐ誰かがいるのであれば、そのことは間違いなく救いになるのだろう。
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