人は何を救い、何によって救われるのか。
本作は同名の舞台劇が元で、それ故に劇中のほとんどが主人公が暮らす薄暗いアパートが舞台。“ワンシチュエーションもの”とまではいかないが、ほぼそれに近い。
舞台でこの物語を演じていたのも容易に想像がつく。
余命わずか、体重272キロの主人公を演じるのは、かつて「ハムナプトラ」シリーズの主演として一世を風靡したブレンダン・フレイザー。
本作で昨年度アカデミー賞主演男優賞を受賞した彼の演技は本当に素晴らしかった。
限定された空間で特段目を引く何かが起きるわけではない本作が、魅力的な一本になったのは間違いなく彼(や脇を固めた名優たち)の素晴らしい演技があったから。
ブレンダン・フレイザーは過去にセクハラの被害を受け、その後発症したうつ病で長らく表舞台を離れていたお方。
そして本作での好演と受賞。見事な復活だ。
本作の登場人物たちは何か・誰かに救いを求め、求められ、それを分け与えんとする。
そしてそれはさまざまな形の結末を迎える。本人達の意思に沿うかは別として。
綺麗で気持ちの良い物語ではないけど、泥臭く“正直な”人生讃歌。
042