アベ二ティKazumaAbe

ザ・ホエールのアベ二ティKazumaAbeのネタバレレビュー・内容・結末

ザ・ホエール(2022年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

他人の人となりを知りたい時、好きな作品や「〇〇(作品名)についてどう思いますか?」と聞くことがある。それは人の価値観だったり、素直な言葉に触れられる機会でもあるからだ。

本作の主人公・チャーリーは娘が書いた『白鯨』についてのエッセイに縋る形で生きてきた人物だ。エッセイの文章の中に娘の存在、そして彼女の果てしない可能性を感じ、希望を捨てずに限られた時間を過ごしている。

アロレフスキー監督が『レスラー』では語らなかった"人と繋がることで再起する人間"の姿が本作のラストにはあって、その瞬間を見ただけでは他人が理解し得ない幸福と救済のかたちがとても美しく綴られていた。重力と病がどれだけ邪魔しようと、文字通り一歩ずつ希望と終焉に向かうチャーリーの姿が忘れられない。