さわけん

ザ・ホエールのさわけんのレビュー・感想・評価

ザ・ホエール(2022年製作の映画)
3.9
ほぼ全編主人公チャーリーの行動範囲内である部屋の中、そして彼を入れて5人の会話でストーリーは進む。

薄暗い部屋の中で1人では身動きも満足に出来ないチャーリーは、深い海底で横たわる、もしくは誰もいない海辺に打ち上げられた鯨のよう。

自分の過去に罪悪感を持ちながら、8年前に自らが捨てて出てきた娘の事を想い続けている。

チャーリーが自分の身体についてのネットで調べ現実を突きつけられた際や、ピザ屋の青年がチャーリーの姿を見て引いた様子を見た時に自暴自棄的に過食に走ったりする様や、周囲の人に病院をいくら勧められても頑なに行かず、しかしながら残された時間で娘との絆は取り戻したいと願う姿はとても奔放に映った。
娘と同居する母親が「evil」と言い放つ位の娘のエリーを「素晴らしい人間だ」と信じる事により「自分は人生の中で良い行いをした」と信じたいだけなのかもしれない。
それらの矛盾を抱えている所も全てとても人間らしさを感じた。

この物語の中でチャーリーはリズを救い、エリーを救い、間接的にだがトーマスも救った。
やはり人は人により救われるのだろうか。
色々と考えさせられた。

贖罪と救いという重いテーマの作品だが、
俳優陣の高い演技力により全体的に緊張感があり最後まで全く飽きずに観れた。
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