マインド亀

ビリーバーズのマインド亀のレビュー・感想・評価

ビリーバーズ(2022年製作の映画)
3.5
権力を持った宗教者は自分の都合で教義を解釈する

●本作と同様のカルト宗教の崩壊映画で最近鑑賞したのが、『Pearl』『X』のタイ・ウェスト監督作品『サクラメント 死の楽園』と似たような感じの作品でございまして、終盤の展開がかなり近いのですが、低予算なのも手伝って、原作のように漫画的に、少しコメディっぽいワチャワチャなのが愛嬌のある鑑賞感になりました。教祖である「先生」も、原作者の山本直樹だし。
それでも城定秀夫監督作品の中ではかなり予算高めの作品のように見えます。

●本作は北村優衣の体当たりな裸演技ばかりが取り沙汰されますが、壊れ始めた「議長」宇野祥平もなかなかの演技。
権力を持った宗教者は、自分の都合のいいように教典や教義の解釈をひん曲げて欲望を満たそうとするし、それができてしまうという恐ろしさ。たった三人だけのシチュエーションに限定することでその恐怖がみるみる現実になってしまうのがわかります。壊れた宇野祥平を止めるにはあの方法しかなかったのでしょうか。何にせよアレをアレするには相当な怖さですし、アレをアレしてもらうのって、やっぱりかなり安全な状況でお互いの信頼感がなければ無理な話ですよね、と意味不明の再確認をした映画でした。

●とはいえ、比較的低予算で結果を出している城定秀夫監督作品の中ではかなりの予算がかかっている作品ではあると思います。どこかトボけた会話劇でありながら、得体のしれないカルトの恐ろしさとそれに搾取されてしまう恐怖の構造、そして教義のぶっ飛び具合なとを良いバランスで楽しめる作品です。
個人的には山本直樹の原作のような、空白感とか余白を感じる映画でしたし、いま現代に観るべき作品のような気がします。観るときは必ず一人で見ましょう。この内容でよくまあR15で済んだものだ。18以上でいい作品だと思いました。
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