kawaebi99

ハッチング―孵化―のkawaebi99のレビュー・感想・評価

ハッチング―孵化―(2022年製作の映画)
3.2
ハッチングの意味を調べたら美術用語
平行に細い線をたくさん引き 角度を変えながら重ねることによって陰影や立体感を作り出す塗りつぶし技法 とのこと
本作をホラー映画として区分したら 怖さは普通以下だったかも しかしながら何とも言い難い不気味さがあった
日本だったら河童などの妖怪の類いなのかな?
アメリカ映画ではなく北欧のファンタジックホラーなので 何処か透明で寒々とした空気感があり 色で例えたら白一色
ハッチングとはそこに描かれる人々の心の陰の部分のことなのか
人間が作り出す心の闇は 独立した一つの「モノ」として存在するのではなく幾重にも重なりあった繊細な偽りと不安が紡ぎ出している陰影の集合体なのかも知れない
その静的でシーンと静まり返ったマイナス方向の神秘性が怖い

何かに成ろうとする魔物と少女の母性が交錯し、そこで展開される(心霊現象ホラーとは180度違う)原始的で素朴な魔物の生態にはゾッとさせられる
魔と純粋の間に愛情が無かった訳ではない というのが一番怖い アレはカラスになる前は別の生き物だったのかも知れないし 遥か昔は元々人間で 呪いによって長年カラスの姿に変えられていたのかも知れない

ラストシーンの後 あのお母さんがどういう選択をして家族がどういった行動をとるか これまでの家族の生活を見て来ているので 察しがついてしまうのも怖い
お母さんが一番ホラーな存在だった
お父さんは最初から最後まで平和ボケしたボーッとした人

こういう映画は好きだ。
kawaebi99

kawaebi99