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我らの罪を赦したまえのワンコのレビュー・感想・評価

我らの罪を赦したまえ(2022年製作の映画)
4.5
【じゃあ現代は大丈夫なのですか?/優生保護法】

※ 短編としてのスコア。

これ短編なので時間を見つけてちょいと是非観てほしい。

日本には、戦前の国民優生法を踏襲した戦後1948年制定の「優生保護法」が、なんと1996年まであって、優生思想や優生政策の観点から”不良”な子孫の出生防止・母体保護の目的で強制的不妊手術や人口妊娠中絶などが一時行われていた。

これは、優生学というおかしげな19世紀の学問を背景にした優生思想が、20世紀に入ってからアメリカを中心に広がったのがきっかけで世界的にも注目されたのだけれども、この短編映画に描かれたように、ナチス・ドイツでは、障碍者の断種を超えて、障碍者の殺害にまで至り、数十万人の障碍を持った子供が殺害されたのだ。

この映画はエンドロール時のテロップで虫唾が走る思いが頂点に達するのだが、中絶など断種ということだけを考えると、それはアメリカを中心に1970年代まで実際に実施されていた。

日本でも、1970年代には障碍者の人権を鑑み批判が高まったが、一部の宗教による人工妊娠中絶を廃止するべきという強い主張が合わさり、問題が複雑化したことで優生保護法の廃止は1996年まで待たなくてはならなかったが、アメリカや一部の欧州の国と同様、1970年代までは断種行為が行われていた。この優生保護法の制定時には、戦後の知的障碍者への性的行為が横行していたことや、養育料目当てや配給品の横流し目的の嬰児の貰い子殺害事件「寿(ことぶき)産院事件」がきっかけとされるが、人権意識が1970年代まで高まらなかったのかと思うと、人権教育の重要性を改めて考えさせられる。

LGBTQ理解増進法なるものが成立の方向にあるけれども、ネトウヨなど極右に配慮して何か所か法案の文言に修正があったことや、一部のウヨ議員が議決を欠席したりと、おまえらが自主的に自分の血筋を断種しろと言いたくなるが、どんな教育を受けるとこんな差別人種が登場するのかとびっくりすると同時に、現代も同様の問題を実は抱えているのだと暗澹たる気持ちにもなる。

因みに、寿産院事件では、裁判では数人の判決でとどまっているが、警察の捜査では90人近い嬰児が殺害されたとされている。
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