赤苑

まなみ100%の赤苑のレビュー・感想・評価

まなみ100%(2023年製作の映画)
4.2
タイトルに惹かれてみてみると、キャストは青木柚くんに伊藤万理華と。これは観るしかないと思い久々の電気館へ。エモかったなーー、、もちろん良い意味で。期待してたより面白かった。"青春回想映画"みたいな類としては、まず前半のテンポが良くて。終盤にも繋がってくる「虹」の合唱をしているまなみちゃんにぐーっと寄っていくとこ、目を瞠るものがあったなぁ。ユーモアのあるやり取りも良い感じに空気に馴染んでいて、とてもよい。対照的に、何も変わらないまま時は過ぎていって、気づいたら全部手からこぼれ落ちていっちゃう感じ。つらいなぁ。先生とか、仲間とか、変わらない奴等も変わっていくもんな。
それだけのことやっといて、「まなみ100%」じゃねーだろ、って普通の人には突っ込まれそうなんだけど、それがとてもよくて。まなみちゃんがどこに行ったかわからなくても、普通に生活は続いていくし、先輩ともくろけいちゃんともなんやかんやあるし。ばりばりに揺らぎまくってるんだけど、それでも心のどこかではまだまなみちゃんが好きで、だからいつまでも「結婚しよう」って言い続ける。でも、当たり前に自分だけいつまでも思春期のままではいられなくて、まなみちゃんが結婚してしまえばそれは終わってしまう、桜の木の下にいたまなみちゃんは消えてしまう。「好きな人何人もいるじゃん」とか、「本気じゃないじゃん」とかいつもいつもはぐらかされても、「ほんとうにばかだね」って言ってふたりがじゃれてるのがもう、本当に嘘くさくなく楽しそうで、あぁこういう時間って確かにあったよなぁって、勝手に誰かが共鳴しちゃうようなシーンが多くて、とにかくぐっとくる。「ナレーションとか回想って、なんで入れちゃダメなんだろう」って思いながら、それでも入れちゃう、それぐらい個人的な物語なんだろうな。一歩間違えば、この映画は"自分の映画"になって、グサグサぶっ刺さっていたかもしれない。あぶねー。久しぶりに好きな方の「エモ邦画」に触れた。こういう映画を電気館で、ひとりで観て、冷たくなった秋の中を自転車で帰るって、これもたぶん後々エモくなっちゃうんだろうなぁ。エモいって言葉、あんま使いたくないとは言いながら、これはエモい。とてもエモいです。良いです。好きです。「結婚しよう」、確かにまなみ100パーセント。
赤苑

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