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NOPE/ノープのAPlaceInTheSunのレビュー・感想・評価

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)
4.7
面白かった!
序盤はまったりとスロースターターな様相を呈しながら終盤からはジャンルを横断しながらハラハラドキドキの活劇で観客を飽きさせない。

何より紛れもなく映画についての映画だった。
映画の歴史、映画史を彩ってきた名作達、映画を撮影することへの愛と尊敬から成り立っている映画。

映画といっても、高尚な文芸作品なんかじゃなく、ホラー、SF、西部劇を代表とするジャンル映画。
これまでの作品で全面に出ていた黒人人種差別の主題はやや後景化(前半のアジア人であるスティーブン・ユァンの起用と、チンパンジーの突然の暴力性に忍ばせている。他の方の感想など観ながら今後じっくり考えたい。)し、よりエンタメ度高く、ジョーダンピール作品の中最も広い観客層に受け入れられる作品に仕上っている。

とはいえ、緊迫した恐怖を描きながら何故か笑っちゃうような、どこかfunnyな印象はジョーダンピール印ともいえる。

最初の映画だとされるEadweard MuybridgeのThe Horse in Motionへの言及から(マイノリティである黒人達が果たした映画への影響の隠滅への異議申し立てにも繋げている)、
最新技術であるIMAXカメラの登用まで、映画史を総括するようなモチーフも見られる。
本作や監督自身が、先人達が作った歴史を受け継ぎ継承するかのような意欲も見え隠れし、頼もしい。

映画の最初がそうであったように、馬が走る、それだけで映画になるんだという原点回帰。
大草原の中で勇気ある者が馬に乗り駆け抜ける。シンプルな絵にこそ数々の名作を撮ってきた撮影監督ホイテ・ヴァン・ホイテマの手腕が光っていた。
ザ・西部劇な劇伴がかかれば西部劇全盛期の世代じゃなくても気分は高揚する。

それにしても、敵を倒すというより、撮影するというのが目的というのが映画狂(褒め言葉)っぽく笑いながらも感動を覚えた。単純にバズ動画撮るぜ!的な思考は今日的とも言えるし批評性に富んでいる。

武器は剣や銃じゃなく、IMAXカメラにフィルムを装填して。
ジョーダンピールの新境地を開いた傑作ムービー。
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