YLxx

NOPE/ノープのYLxxのレビュー・感想・評価

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)
4.6
生き物同士が一方を支配することなど許されない、生き物とは互いに尊重し支えあって生きて行く。
ジョーダン・ピールが今まで描いてきた人種/文化の範疇から飛び出した大作

猿のゴーディーを管理し笑いものとし食い物にした番組「ゴーディーズ・ホーム」その中でも唯一ゴーディーを対等に仲間として扱ったのが元子役でテーマパークのオーナージュープ、しかしジュープはGジャンを管理し食い物にしようとしたことで脅威に触れることになる。これはジュープだけでなくOJとエメラルドにも共通しており、OPでOJと馬の対等でありビジネスパートナー的側面が見えるのだがGジャンに対してはリッチになる為に撮影したいという欲望しかなく、完全に利用する側でしかない言動が見られる。このコーディーとGジャンを決定的に繋げるの役目をしているのが番組で襲われた女の子役の子であり、Gジャンを見た時の憎悪に満ちた表情にそれが表れている。
唯一Gジャンと心が通わそうとしたのはエメラルドだったのではないかと思う(通わそうとしたというよりも彼女の明るく天真爛漫な性格がGジャンに伝わった)、犬や猫がそうであるように。ラストのエメラルドはどこかGジャンと戯れている感じがして、爆発後の表情からは安堵と共に強く悲しみの感情が私には見えた。Gジャンとエメラルド、幼少期ジューブとゴーディーこの2組の最期はリンクしている。

この映画の面白いのはジャンルが決められないこと、ホラー演出は多いが観客を驚かせる工夫はそこまでされていない様に見えるし、SFというには作中での科学的説明や世界観が薄い、それでもここまで生き物を表現したスケールが大きく物語として完成したものを撮れてしまうピール素晴らしい。
あと最近うるさいマイノリティ問題をセリフ(設定)だけに入れたのがうまいし規模が違うことを示している。

個人的にはラストのOJのカッコつけすぎているショットや馬のオブジェクトの顔がフロントガラスに突き刺さるシーンはコメディならではのシュールさを感じた。Gジャンの鳴き声なんてコメディアンらしい発想と言える。
更にはエヴァやAKIRAへのリスペクトがあって面白いし、エメラルドの服はイケ過ぎているし、OJはRage against the machineのTを着ていてカルチャーへの遊び心が本当に良い。

しかしなぜ一番搾りを飲んでたんやろか