コマミー

NOPE/ノープのコマミーのレビュー・感想・評価

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)
4.0
【ありえない事】


"ありえない事'が起きた。

空の上、一つだけ動かない"雲"。

そこに潜む未知の物。

半年前の"父の死"は、その雲の中に潜む未知の物と何か関係がある。

そう確信した牧場主"OJ"は、その未知の物との戦いに挑む。




本作には、「インターステラー」からのクリストファー・ノーラン作品に参加してきた撮影監督"ホイテ・ヴァン・ホイテマ"が参加している。彼は"IMAXカメラ"を駆使してノーラン作品の映像を盛り上げてきた撮影技師で、その"広角"を活かした撮影技法はまさにIMAX向きと言えるだろう。
本作の舞台である"南カリフォルニア・ロサンゼルス近郊"にある広大な牧場地域と言った"ロケーションを充分に活かした"撮影方法が、この作品の"不穏な空気"を更に盛り上げてくれる。



さて、本作で"描かれている事"は何なのだろう?

私は、"周りが見えていない"人間への警鐘と、"動物本能の強大さ"を描いているものと確信した。あまりネタバレに踏みたくないので、詳しく書くと言っても多少は端折るが、ザックリ書くとそう言う事だと確信する。

まず、周りが見えていない人間への警鐘とは、若者の"バズる事に対する執着"や今も定着して止まない"人種差別意識"に対してだ。これは二つ目の動物本能の強大さにも繋がる事なのだが、この人間の執着心と言う動物本能を攻撃し、殺す為に飛行物体がやってきたのだと確信した。監督はこれに、白人の"黒人文化剥奪"を混入させ、白人がしてきたあらゆる黒人の尊厳や文化の破壊を、"映画の歴史"と共に描いているのだ。
2つに、動物本能の強大さなのだが、本作には冒頭に凶暴化した"チンパンジー"…名は"ゴーディ"が出てくる。ゴーディは人間に"飼い慣らされた"チンパンジーであったのだが、ゴーディが出演していたシットコム「ゴーディ家に帰る」でのある"トラブル"によってゴーディは凶暴化。チンパンジーの強靭な腕力によって会場は惨状となる。
これは元となった事件を参照しているのだが、私はこれに"黒人奴隷の解放"を繋げるとしっくりくる。

チンパンジー:ゴーディ=黒人奴隷

周りの人間=白人至上主義社会

本当はもっと意味があるのかもしれないが、私みたいな初心者が語るので有れば充分であろう。更に冒頭に"ナホム書の一節"を持って行ったのも、同じような事が言える。

そして本作には、日本の「エヴァンゲリオン」や「AKIRA」の"オマージュ"が折り込まれていて、それも楽しい。詳しくは劇場で見てほしいが、あの飛行物体も"電動バイク"でのあのシーンももろにそれ。これだけでも観る価値はあるだろう。


私はジョーダン・ピールの作品を本作で初めて劇場で拝見したのだが、今作も確かに観客の考察力が試される作品なのだが、IMAXでの鑑賞やオマージュを探すと言うある意味アトラクションとしても楽しめるのが、今回の「NOPE」なのではないかと確信した。
今日本でも、数々な問題が生じているが、そこに舞い降りた本作は日本人にもあるヒントを差し込んでくれるだろう。そして今、本作のIMAX上映がもう既に減りつつある。出来れば、無理してでもIMAXで本作を観てほしい。IMAXでこそ本作の価値を知る事が出来るのだから。

是非とも、お願いします。
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