TaiRa

NOPE/ノープのTaiRaのレビュー・感想・評価

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)
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過去作はテーマが前景化していて微妙だったジョーダン・ピールだけど、今回は好き。

予告編だけで何が言いたいか大体分かっちゃうのがピールの頭でっかちさだけど、今回はそもそも言いたい事が抽象的なので説教臭さは薄い。何が言いたいのか分かんない人も増えるだろうけどそれで構わないと思う。本質的にエンタメの人ではなさそうだし。良くも悪くもお笑い出身の映画監督という印象。映画の原始=マイブリッジの連続写真から現代ハリウッドに至るまでの「搾取された人々(あるいは生き物)」による物語。史実と乖離して排除されて来た黒人やアジア人、女性らによる西部劇、喰い物にされて捨てられた子供や動物たちの悲劇性、色々と含意がある訳だが、それを映画による映画への逆襲として描くのがタランティーノ的というか何というか。スペクタクル=見世物にされて来たものの反撃にもなっていく。暴力的に他者を監視し喰い物にする「視聴者」というアイディアがあまりにもそのまんまに、阿呆らしいくらいハッキリと出て来る。「眼」とも「カメラ」とも見える造形の細部が面白い未確認飛行物体。『未知との遭遇』とも『サイン』とも違う形でアプローチする独自性は確かにある。肝心の西部劇的な活劇やSFホラーとしての演出力が上手いかといえば、やっぱりそこまでではないけど(今回はストーリーテリングでもグダってる)、後半はジャンル映画的な楽しさもあって展開には飽きない。とにかく前半が冗長過ぎた。クライマックスでマイブリッジの連続写真と同じ構図でダニエル・カルーヤを撮ってなかったと思うがそれはどうかと。あと宙を舞う馬や人をちゃんと見せられてない。『ツイスター』の牛みたいなケレン味がないの。終盤のネタ被ってる『イントゥ・ザ・ストーム』だってそのへんはちゃんとやってたぞ。ゴーディのエピソードは元ネタの事件も含め「チンパンジー怖え…」となる反面、パンくんへの仕打ちとかリアルタイムで見てきた世代としては心が痛かったね。
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