設計士あーさん

NOPE/ノープの設計士あーさんのレビュー・感想・評価

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)
3.0
OJとエメラルドの黒人兄妹、OJは口数が少なく自分の考えを積極的に表現せず、結果大惨事を巻き起こした。(馬がスタッフを蹴り上げた)
エメラルドは口数が多く自己表現を積極的にするが肝心な「空気」が読めず馬のレンタルに来たのに「自分の売り込み」に夢中になり過ぎて結果大惨事を巻き起こした(馬がスタッフを蹴り上げた)
この兄弟、壊滅的に仕事ができず相性も悪い。亡くなった父や祖父のようにビジネスを順調に進めることができず、元子役のジューブに馬を抵当に入れ金を借りるなど廃業寸前。

そんな二人にまたとない「ビジネスチャンス」それが「UFO」
しかしそれをチャンスと思ったのは兄妹だけでない。ジューブもまた、ビジネスの活路を見出した。
OJはこのUFOと目を合わせてはいけないことを、馬の事故現場から想起し気付くことができた。結果、「本物」を撮りたいホルストにその傾向を利用され、ホルストは自身の命と引き換えに本物を撮影しようとする。
ジューブは子役時代、猿と一緒にホームビデオのようなコメディを撮っていた。そして猿は、ある日突然、スタッフやキャストを襲った。コメディ時代の子役の好きだった女の子も、猿に顔をズタズタにされてしまう。
しかし猿はジューブを襲わない。血みどろの手でグータッチをしようとジューブにコンタクトを取る。そして、ジューブの目の前で頭をぶち抜かれる。ジューブはこの日、最悪の奇跡に立ち会った。
猿はジューブ(アジア人)を仲間だと、この撮影空間で共に怯え、白人たちに抑圧されてきた「同士」だと考えていたのだと推察する。
OJがエメラルドを救うためにUFOと目を合わせたがUFOはOJを襲わなかった。もしかしたらUFOは黒人のOJに何かを見出したのかもしれない。
それはかつて殺された猿が、白人に支配され白人の家庭に「エンタメ」を届けるためにジューブと過ごした日々にシンパシーを感じたように、UFOにもOJに思うところがあったようだ。
それはUFOもまた彼らの世界のマイノリティだったのかもしれないし、単純に「お腹がいっぱいになっただけ」なのかもしれない。しかし猿の描写から推察するに、OJやエメラルドはきっと「襲われない」

エメラルドのバイクの停め方がAKIRAの金田のようでカッコ良かった。役者も出来る、という売出しに嘘はないようだ。