菩薩

ファルハの菩薩のレビュー・感想・評価

ファルハ(2021年製作の映画)
4.2
最小限の開示で最大限の効果を期待する撮り方が奇しくも『サウルの息子』を想起させる。あくまで個人の目線に沿った展開、それすらも制限される極めて狭い視野かつ浅い被写界深度の中で今日まで続く大惨劇の始まりと一部始終とが刻まれていく。家父長制社会下における抑圧に始まり全てが徹底して破壊される中で監獄ともシェルターとも言える空間で、逃げられず戦えず助けられぬまま流される血とは対称的な血が流れ、少女は1人惨劇の最中に大人になる。今日の情勢と完全にリンクしてしまう展開でかなり精神的に辛いものがあったが、これは今日一回限りの上映で終わってしまうには相当惜しい。赤児の頭を踏み潰そうとするもギリギリのところで勝るヒューマニズム、それがひいては最大の抵抗となり最強の武器となる。密室状態での排泄描写から逃げないのも良かった、外が静かになる一方で中には虫が湧いていく。
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