りょう

月の満ち欠けのりょうのレビュー・感想・評価

月の満ち欠け(2022年製作の映画)
2.0
 かなり設定に無理があります。なぜ彼は高校生の女性が自分の元妻だとわかったのか。“Remember Love”だけで…。なぜ彼女は同級生の事故の真相を突きとめたのか。そしてそれを警察に通報しなかったのか。ついでに、なぜ伊藤沙莉さんが高校生を演じたのか。
 物語のテーマは“生まれかわり”で、ファンタジーの設定としては否定しませんが、この作品は気色悪いホラーを観た感覚になります。その発端となった女性は、夫との不仲を口実に大学生と不倫関係になり、不慮の事故で死亡しますが、現世に未練があるので、7歳の少女の躰を乗っとり、自分の人生をやり直そうとしました。その少女が高校生になり、前世で不倫関係にあった大学生と再会しようとした直前、またしても事故で死亡したので、今度はその高校生の友人の娘の躰に…、という1人の身勝手な女性の呪いがループする物語でした。このままだと最後の娘も早死にしそうです。
 躰を乗っとられた少女たちは、個人の尊厳や主体的な人生を奪われていいはずがないし、彼女たちには自分の意志で恋愛する自由があるはずです。“親ガチャ”という言葉が流行っていますが、その文脈で“親を自分で選ぶ権利”を主張したかったのでしょうか。
 原作は直木賞受賞のベストセラー小説らしいですが、なんでこんな作風になってしまったのでしょうか。俳優陣の顔ぶれはかなり充実していますが、目黒蓮さんの素人っぽさが浮きまくって物語のテンポが途切れてしまいます。途中から共演の有村架純さんが可哀そうになりました。
 ジョン・レノンが殺害されたというエピソードが物語に溶けこんでいないし、そもそも映像が1980年の街並みではありません。時代を2007年までの27年間に設定した意図がわかりませんでした。
 あらかじめサントラを聴いていましたが、オリジナルの歌曲が映画用とは思えないほどハイクオリティです。映像にマッチしているかというと微妙でしたが…。
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