りょう

前科者のりょうのレビュー・感想・評価

前科者(2022年製作の映画)
3.8
 最初は2年前の試写会で観ました。原作は読んでいませんが、ドラマ版を全編観ていたので、コンビニ店長や元保護観察対象者のみどりさんとの微妙なやりとりまで理解できてよかったです。映画版は、エンタメ要素が加味されているので、こういう重厚なテーマを苦手とするひとでも観られると思いました。
 ここまでが当時の感想ですが、先日は、滋賀県の保護司が殺害され、容疑者として保護観察対象者が逮捕されました。これは更生保護の業界で驚愕の事件です。そんなきっかけで、3回目を観ました。
 この作品そのものは、少しドラマ版のイメージに引っぱられて、純粋に映画として観られなかったところもありますが、キャストがかなり豪華になっています。刑事のマキタスポーツさんがかなりハマっていました。派手に自動車にはねられて、ケガは大丈夫だったのでしょうか?
 ラストシーンでは病室の2人の会話が長尺すぎるし、阿川と滝本の中盤のラブシーンは意味不明でした。現実離れしたシーンが少なくありませんが、こういうレアな職業の世界を舞台とする映画では致命的で、リアリティを感じられないまますべてが嘘っぽくなってしまいます。クライマックスのアパートのシーンでは、容疑者を現行犯逮捕したのに手錠をはめないまま連行して、警察が最悪の不手際を招くところなんて…、ちょっと絶句するほどでした。
 保護司は、地元の名士などの中高齢者が選任される傾向にありますが、阿川佳代のような若い保護司もいないこともないそうです。ただ、保護観察対象者に寄りそいすぎると、精神的に“もっていかれる”ので、彼女は感情移入しすぎている印象です。そういう意味ではカウンセラーに似た職業かもしれません。
 数年前まで、更生保護に関連した仕事をしたことがあるので、保護司の人材難とか、保護観察官の絶対的な不足など、その不十分な人的体制を理解しています。しかも保護司がボランティアだなんて、世間的にはなかなか認識されていません。WOWOWがドラマ版と映画版を制作するなんて絶好の機会なのに、法務省保護局がタイアップして広報しなかったことが信じられませんでした。いろいろと大人の事情があったのかもしれませんが…。
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