ぺんじん

LOVE LIFEのぺんじんのレビュー・感想・評価

LOVE LIFE(2022年製作の映画)
3.1
うーん、ちょっとこの映画には全くハマらなかったな…というか咀嚼できない…なんか噛んでも噛んでも味がしないガムみたいな感じ…
全体的な印象を言えば、とても記号的な映画。色々な状況に苦しめられていく女性の姿、「聖母的な女性」にはどうしてもなれない女性の苦しみを描いているのだけど、設定や演出があからさま過ぎてどうしてもリアルな物語として頭に入ってこない。
まず夫とその親が住んできた団地の部屋をその息子夫婦に明け渡して、その団地の向かいの部屋に住むというのがまずよく分からない。一軒家の母屋を譲るというならまだしも、どう見ても狭い部屋だし、しかも父親が主人公の事を良く思っていないなら、尚更そういう行動を取る理由が分からない。あと父親と息子夫婦の仲を良くするために、夫の部下5人くらいがプラカードみたいなものを持って近くの公園から不機嫌な父親の誕生日をサプライズで祝うんだけど、今どきこんな事やる奴いないし、あとで色々と問題になるだろ!だからといって別に夫がパワハラ気味上司として描かれる事もなく、なんとなく良い話的になるのもよく分からない。多分昭和的な家父長的な感じだったり、職場の家族的な共同体を描こうとしているんだけど、2022年の団地でそれを前提もなく描くのは難しくないか…あと夫公務員だから家もローンで買えるのに、なんでギスギスしている人たちが団地の向かいに住んでいるのかが理解できない…
他にも無理のある演出が多いと感じるのだけども、やはり一番引っかかるのが息子の存在が映画を通じて希薄な事。悲劇の象徴としては描かれるのだけど、彼がオセロ以外でどんなものが好きでどんな風に生活したかが全く描かれない。前の夫と再会するのだって息子の事がきっかけになったのに、描かれるのは主人公と今の夫と前の夫との歪な三角関係みたいなのばっかりで息子の話が出てこない。いや辛いのは分かるんだけど、息子の洗濯物とか息子のランドセルとか息子用の食器とかはあるでしょ…オセロだけしてたわけじゃないでしょ…というか猫の話をするな!猫の話をするんだったら、息子の話をしろ!お前らの息子だろうが…
そういう感じで聖母になれない女性の哀しみ、みたいのは強調されるんだけど、彼女がここに至るまでにどういう生き方をしてきて、ここにたどり着いたのかの描写が少な過ぎるので、主人公の取る行動がどれも突飛なものに見えてきてしまう。これが不条理劇的な描き方であれば見方も変わってくるんだけど、長回しも多くて結構ウェットなストーリーになっているので、どうしてもリアルな物語としても、寓話的な話としてもどっちにも理解できない。
あと「神の不在」の話も滅茶苦茶薄いな…これは『さがす』の時もそうだけど、宗教的な理解無しにシスターを記号として映画に出すのはやめて欲しい。シスターが滅茶苦茶喧嘩に強いとかいうファンタジーだったら良いけど、やはり下品だよ…キリスト教徒では無いけど…
なんかストーリーもキャラクターも三角関係も全ての狙いがホログラムのように浮かんでくる映画だった…ただ息子の存在だけが沈んだまま…愛って何かね…
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