YK

LOVE LIFEのYKのレビュー・感想・評価

LOVE LIFE(2022年製作の映画)
4.5
深田晃司・・・それは自分が最も好きな監督の1人。不条理な展開を見せながら、最後には人の本質のようなものを突き付けてくる。そして矢野顕子・・・彼女も自分が最も好きなアーティストの1人だ。そんな2人のドリームコラボというような本作。映画は、矢野顕子の名曲『LOVE LIFE』にインスピレーションを受けた深田監督が、オリジナルストーリーとして長年温めて完成させた、とある家族の物語である。

映画には主に6人の大人が登場する。団地に住む夫婦、妙子と二郎。2人には敬太という息子がおり、仲睦まじく暮らしている。同じ団地には二郎の両親も住んでおり、部屋がある向かいの棟から挨拶を交わしたりすることも。また、妙子の元夫「パク」と二郎の元カノ「山崎」も物語を左右するキーパーソンだ。そんな大人たちの「愛」にまつわる物語、ということだが、言えるのはここまで。ただ、愛の映画が毎年数えきれないほど作られている中で、この映画はそのどれとも違う、別次元のものを描き出した。それは単なる愛情を超え、「愛とは何か」、ひいては「人生とは何か」、「人間とはどういう存在か」という問いに発展する。自分はこの映画を観て、まず人間に対する諦めのようなものを受け取った。誰も正しくないし、誰も自分ではない。そして、人は究極には独りだということを改めて感じた。その上で監督が映画のラストをどう描くのか、それを観て初めて「LOVE LIFE」の意味がわかるのだった。
 
それと、深田晃司監督の演出はやっぱり好きだ。自分は映画のストーリーに感動して泣くことはないが、とんでもない演出・映像が目の前に映し出されているという奇跡に涙することはある。今回もそれがいくつもあった。例えば、公園で妙子がパクと再開するシーン。パクの後ろを電車がバンバン通り過ぎるところなんかで、訳もなく涙が溢れ出そうだった。
YK

YK