りょう

野球部に花束をのりょうのレビュー・感想・評価

野球部に花束を(2022年製作の映画)
3.0
 「格言マン」の描写がウザかった以外は普通に面白いコメディでした。先日観た「グッドバイ、バッドマガジンズ」もそうでしたが、主人公が頑張ってもサクセスストーリーにならないという、映画のセオリーに逆行した物語が最近の流行りなのでしょうか。なかなか好きな展開ですが…。
 個人的には小中高とサッカーばかりやっていたので、野球部の世界は同級生のことしかわかりません。もう35年前のことですが、ここまでの封建的な組織ではなかったはずです。練習中の水分補給は御法度でしたが…。でも、公立高校で野球専用グラウンドがあるだけマシです。当時は1つの校庭で野球部とサッカー部と陸上部が同時に練習するのが当たり前だったので、打球が直撃したり、走者と衝突したりすることも少なくありませんでした。それはそれでブラック部活でした。
 そんな学生時代の部活を思いだしながら爆笑する作品だと思いますが、途中からヘンな違和感がありました。黒田たちが2年生になって、1年生にくり返す先輩の言動で確信しましたが、これはナチスやファシスズムの加害のロジックです。彼らの五厘刈りがそのイメージを増幅させています。支配の構造の一部になると、その感覚が麻痺して、加害がエスカレートしていくばかりです。監督や上級生が下級生を支配するための非生産的で理不尽なルールがはびこっているので、いつまでも弱小チームのままです。
 ただ、終盤に入部する1年生の1人にこれまでない特性があって、それを受容した野球部には可能性を感じました。とても現代的な展開だったので、少しだけ安心しました。
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