ぷかしりまる

教育と愛国のぷかしりまるのレビュー・感想・評価

教育と愛国(2022年製作の映画)
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考える材料として殿堂入り。小さい頃は教科書って絶対正しいと思ってたけど、そうではなく、教科書ごとに研究者による見解の相違があり、内容には政府とのせめぎ合いが続いている。

学術研究を踏まえて、戦争加害の記述を増やした日本書籍が教科書として採用されなくなった。その頃新しい歴史教科書をつくる会(自由社、育鵬社)が発足。古事記の詳細な記述を行い、教育勅語を肯定的に扱う。

新しい歴史教科書をつくる会のメンバー(伊藤隆)へのインタビュー
「ちゃんとした日本人を育てたいからね」
ちゃんとした日本人を育てるとは?
「…左翼じゃない。反日ではない。」

教科書への政府の介入→教科書改革=政府見解の反映。河野談話の否定。慰安婦は性奴隷ではないとする見解が取られる。
「学び舎」の教科書は「反日極左の教育」であるため、採用を中止するよう促すハガキが学校に数百枚送られてくる。匿名が多いが、その送り主には森友学園の理事長である籠池も含まれている(安倍首相がんばれ〜)。教科書を読んでないのに教科書採択の反対ハガキを送った人物もいた
これは政治的圧力に他ならない…cf: 表現の不自由展の開催

問題となる教科書内の記述
慰安婦の強制連行、沖縄戦の集団自決(スパイ容疑や自害の促進など軍の関与があったという記述)、関東大震災において殺害された朝鮮人の数字(政府に消される)
97年の教科書→慰安婦問題の記述。

政府見解「従軍慰安婦」と「強制連行」の言葉を禁止、文科省が検定を通過した教科書を訂正させる→「慰安婦」「徴用」への変更という政治介入。

日本学術会議…科学が戦争に利用されたことへの反省から誕生。岡田教授の任命拒否
https://news.yahoo.co.jp/articles/455d50e7e81df7ba88e16e703187d3c7c3ec6b3e
アカデミズムへの介入。社会学者の牟田和恵は論文で慰安婦を扱ったことから、杉田水脈から猛攻を受ける。反日教育に税金を使うな、ということだった。

以下私が思うのは、日本人を貶める、誇りを持てなくなることと、歴史的事実を無かったことや歪曲すること、触れないでおいておくことは異なるということだ。最終的に誇りを持つ等々の判断を下すのは個人の問題であり、それ以前に知る権利を禁止するべきではない。
また日本を守るために「命をかけて戦った」先人への敬意、という安倍晋三の言葉。先日読んだ鈴木邦男の「失敗の愛国心」における記述を思い出した。彼は山口二矢による刺殺、三島由紀夫の自決に、自身の存在意義を問われたという。
これらには没頭したい、命をかけて何かに打ち込みたい(雨宮処凛も同じようなことを言っていたと思う)という欲望が共通している。そういうわけで、ぷ的にはやっぱり國分功一郎先生の「暇と退屈の倫理学」に戻ってくる。じゃあどうすればいいのかは分からないけれど。考えなければ。生きがいというアイデンティティ確立のために、ぷはオウム信者やテロリストになっていたかもしれない。人ごとではあり得ない。
自分の命はどうしても大事だし(お腹が空いたら食べたいし危険が迫れば逃げたい)そりゃそうなんだけど、命を引き合いに出す愛国心は気持ち悪い。全体主義の前で立ち止まって考える人間になりたい