[スペイン、取らぬ狸の皮算用]　60点

"スペインの3B"の一角ルイス・ガルシア・ベルランガの初長編。いきなりナレーターがまくしたてるように舞台となる村とそこで暮らす人々について読み上げるので、日本語字幕が付いていることにまず感謝した。物語はマーシャル・プランの一環としてアメリカの使節団が来ると役人が知らせに来る場面で始まる。耳の遠い村長は、歓迎に成功すれば鉄道を通してもらえると考え、偶然村を訪れていたアメリカ巡業経験を持つ歌姫マリアのマネージャーを右腕に抜擢して大改革を行うことに。その大騒動の有様を"親切な叔父さん"のような語り口でナレーションで紡いでいく。村人たちは村長とマネージャーの甘言に乗せられて、捕らぬ狸のなんとやらと言わんばかりに夢だけ広げて村をお祭り会場に変えていくわけだが、今の家を隠すためにハリボテの家を作ったり、牛の首の壁掛けを本物の牛で代用(壁に穴を開けて首だけ通す)したり、よく見せようとする創意工夫に満ち溢れているのが面白かった。そして、それがそのまま実現可能そうな夢→実現不可能な夢として連鎖し、西部劇のヒーローになったり裁判にかけられたりするのが良い。村長とマネージャーが夢の中で西部劇風の撃ち合いをするってことは、やっぱり村長的にマネージャーが嫌いなんだろう。

CANOAで配信しているが、恐らく配信開始から鑑賞者数は二桁いけば良い方なのではというくらい、ラテンビート映画祭公式も宣伝してないし、Filmarksにもレビューほぼないので、"いつまでも あると思うな ベルランガ"の精神で『プラシド』も早めに観たいと思います。

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