TakuoAoyama

まんたろうのラジオ体操のTakuoAoyamaのネタバレレビュー・内容・結末

まんたろうのラジオ体操(2022年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

試写会にて。

『Hulu35 クリエイターズ・チャレンジ』
参加資格は35歳以下。新世代〈映像クリエイター〉発掘&育成プロジェクト。610組/849企画の中から選考を勝ち抜いたファイナリスト5名ら映像制作のプロによるサポートと制作費支援のもと、自らの企画を映像化する。

正直期待してなかったけど、結果5作品共良作でした。
ストーリーやジャンルはそれぞれ違うけど、若手クリエイターの方々故か、描かれていた努力、葛藤や苦悩、希望や自己肯定感といったテーマはどれも共通していたような気がした。

この素晴らしい企画を弾みに次回作も面白い作品を期待してます。
40分前後の鑑賞しやすい尺なので、Hulu入ってる人は騙されたと思って是非。

①脱走球児
躍動感溢れる冒頭の脱走シーン。
監督はバスケをずっとやっていて本作と同様に試合に出れずなんでこんなことやってんだろうと感じていた学生時代の経験を基に制作。なぜ野球へコンバートしたかは坊主だからより過酷さを強調できるかなということ。
拘ったのは水の飲み方とも言っていた通り、野球バカの世間知らずの2人が、いざ野球から離れた時のオドオドキョドりながら色々な経験をしていく姿が面白かった。兄の完全オタクな喋り方も最高。

②まんたろうのラジオ体操
決して深くは関わらないけど、その人がいるだけでお互い救われるというストーリーを描きたかったという監督。AD3年目という自身の姿を投影し、報道畑で働いてきた経験を基に焦点を当てるのは「映らない存在」「孤独死」「若者の生きづらさ」等大きなニュースや報道で見過ごされがちな社会問題。5作品の中では一番監督の想いというかメッセージ性が強かったように思えた。

穴の空いた蓮根で不完全な姿を象徴としたとか、1928年から国民の健康増進のためにその歴史が続くラジオ体操の理念やラジオ体操第3が変遷の中で幻となり忘れ去られた経緯等興味深い話を伺うことができた。(2013年に熊本大学の教授が復刻し、コロナ禍で話題に)

そしてラストのさくらの恥を晒したラジオ体操第3にはグッときた。

③速水早苗は一足遅い
「あなたはきっと遅れて聞くでしょう、だから今日言っておく。」母の言葉に号泣。

娘を思うばかり、厳しくついついお小言を言ってしまう母。本心は誰よりも娘を気に掛け、誰よりも娘の性格を理解していた。

5名の中で34歳と最年長の監督。
眼鏡からコンタクトに変えたら世界が違って見えたという監督自身の経験に着想を得、同業の奥さんが先に昇進し、停滞感や焦りを感じている素直な気持ちを吐露し、性別を変え女性目線で本作のストーリーに重ね合わせた。

ラスト少しずつ自らの発言や言動を変えて行く彼女の日常生活での希望と、重篤状態から目を覚ました母を敢えてシンクロさせたエンドロールへの道も洒落てて良かった。

④鶴美さんのメリバ講座
BL好きな腐女子の美少女、ゲイの美男子、熱血太宰治(ダザオサ)教師とキャラクター設定がばっちり。
メリーバッドエンド、通称メリバ。物語において、主人公当人にとっては幸せであるが、その周囲の人や読み手からはそうではないと思われる結末。愉快なことを意味する英語の形容詞merryと、不幸な結末を意味する和製英語バッドエンドを組み合わせた語。2014年にTwitterユーザーによって定義付けられたという。

一風変わったテーマと思いきや、幸か不幸か人によって解釈が分かれる終わり方という意味では思えば様々な映画でも使われているように思う。

5名の中で20歳と最年少の監督はなんと映像関連の仕事には一切関わったことがない正真正銘の素人大学生。
それでも台詞や略語、キャラクター設定等、監督のオタク経験が抜群に活かされた作品だったと思う。主人公の秋田汐梨を10代の美少女とキーワード検索して決定したり、鶴美環奈という役名も橋本環奈から取ってきたりと、一見適当なようで計算され尽くした監督のクリエイティブな発想が光り輝いていた。

⑤瑠璃とカラス
監督は中学時代不登校で高校も中退。そんな過去の青春を謳歌できなかったネガティブな思い出も、笑われ、笑わせ、強くなるというポジティブ変換メッセージを込めて作られた作品。

昼は進学校の大瑠璃学園、夜は不良が集まる定時制学校の烏丸学園と2つの顔を持つ校舎。同じ席に座り偶々ノートで交換漫才を始めた2人の出合いが物語の切欠。真面目と不良のバディや漫才で人生を変えるというミスマッチな設定が胸アツ。敬語を止める瞬間、マイキの名前を呼ぶ瞬間等各シーンのディテールにも拘っている。

ラストの7つ目の漫才は皆様にお任せという意味を込めたとのこと。

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