甲子園の魔王

さかなのこの甲子園の魔王のネタバレレビュー・内容・結末

さかなのこ(2022年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

「なんでさかなクン役がのんやねん」というツッコミは開始10秒で封じられる。

『オクトパスの神秘:海の賢者は語る』というタコ愛に溢れた映画を観た直後だったので始まって早々刺身になって登場した時は泣き崩れそうだった。タコぉおおお…っ!!!😭
おい待ってくれ!この感想欄にメモりながら映画みてるんだけど今お父さんがタコの頭ちぎってアスファルトに叩きつけ始めたぞ!…一回休憩するか?

「千葉が持ってる海なんてないんだよ。千葉にそんな力があると思う?」
千葉を東京の植民地としか思ってないやつのセリフだろこれ。

「お前モモコのこと好きなんだろー?」の言い方最高すぎるだろ。この映画のセリフ回しというか会話めちゃめちゃツボかもしれん。

さかなクンが近所の自由おじさんになっとる。魚好きって事しか取り柄がなく日常的に通学路に立ち近所の小学生に声をかけ、最終的には不審者として警察にパクられる無職のギョギョおじさん役のオファー受けたさかなクンたくましいな。

なんか不良と交流し始めた。ギーク系がヤンキーと仲良くなる展開たまらん。男子校みたいな関係性。青鬼は可哀想。
「お前魚好きなのは分かっけど魚以外のこと悪く言うのよくないぞ」
総長最高やん…。子供がときに倫理のかけらもない言動を取るように、純粋と善は決してイコールではない。むしろ社会性が備わっていないという点では大人より不道徳ともいえる。しかしこういう天然系の主人公の半生を追っていく作品って主人公は善なる存在として内面も全肯定されがち(な気がする)だけど、ちゃんとミー坊は性格の負の面も描かれていて、だからこそ身近に感じられる。

お魚博士になりたいという夢を持ちながらもいつも通り魚と戯れながら過ごしそのまま大人になってしまったミー坊。
“そのままで良い”と肯定し続ける周囲の人々と「いい大人なのに…」と冷ややかな笑いを向ける人々、そしてやる気はあっても未だどうしたらお魚博士になれるか分からないままの何者にもなれないミー坊。それぞれの立場をあまり偏りなく、悪役を押し付ける事なく相応に描かれている。生き方を肯定されているはずのミー坊が悶々としたまま満足していない、でも魚が好きという部分だけは曲げないのが良い。

全体的に展開は早めではあるものの日常系アニメでも観ているような緩やかな空気感も醸していて楽しいんだけど、終盤30分のガレージに絵を描くあたりからTVに出演して人気になっていくまでの過程はさかなクンの人生におけるカノンイベントを淡々と消化しているように感じて少しだけ熱が引いてしまった。ちゃうねん!俺はさかなクンの半生に添加されたフィクション部分が好きやねん!
逆にしっかりさかなクンの人生をなぞるならTVチャンピオンで無双するところもやってほしかったな。

が、作中で唯一救われなかったモモとミツコに光をあて過去のミー坊と重ねる描写で綺麗に締まったので十分満足。
甲子園の魔王

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