この映像を撮った1986年だってもう既にイオマンテは忘れられた儀式になっていて、映像に残せたこれも、当時から75年前に行われていたものに近かったり再現されているだけで、もっと昔のイオマンテは全然違う儀式だったのかもしれない。
残すこと、引き継ぐことはもちろん大事だけど、生活や文化の変容で変わっていくこと、その中で淘汰されるものや自然に消えていくものがあるのも当然のことだと思う。だとすると、消えゆくものを保護し、残していこうとすることはある意味でおこがましいような気もしてしまって、でも歴史や文化の一端として昔の伝承や行為を知ることは楽しいし、積み上げた歴史の上だからこそ成り立つものもあるわけで、｢過去の遺物として語り継ぐもの｣と｢現代でなお受け継ぐべきもの｣の線引きは難しいなぁと、この映画を観て感じました。
2021年にはチセもコタンも見る影もなくなっていて、35年の間にイオマンテは｢過去の遺物｣になっているんだと思うと、1986年はちょうど過渡期だったのかもしれないね。
