ルパン3000世

夢のルパン3000世のネタバレレビュー・内容・結末

(1990年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

この映画のことを書く前に、当時の時代背景を考えなければならない。1990年はまだバブルが弾けておらず、映画業界にオカネが回っていたことがこの映画の制作において重要だったに違いない。

オムニバス作品ながら、作品の随所に「たった数秒間にどれくらいの時間とオカネをかけたのか」と思わざるえない美術セットがでてくる。
特に1話目の「日照り雨」の最後のシーンはヨリのシーンとヒキのシーン合わせて8秒くらいだったと思うが、道端にさまざまな花が植えられている。
花が植えられる位置の調整等たいへんだっただろうな、と思わせるシーンだが、繰り返すが8秒ほどしか使われていない。

6話目の「赤富士」は山が噴火しそうになっているシーンがあるが、これも美術セットであり、CGが使われていない。
すごいオカネのかけ方だなと思いました。

個人的に好きな話は1話目の「日照り雨」、
2話目の「桃畑」。日照り雨でキツネの嫁入りを子どもがみるシーンがあるが、このシーンの人物とカメラ位置のバランス、カメラレンズ選択、カットのつなぎ方はすばらしいという他ない。

2話目の桃畑に人間?と化したヒナ人形たちをヒキで撮るシーンがあるがこの時の「役者の赤い衣装」と「周りにある緑」の色の発色がすばらしい。

黒澤明はこの緑と赤の発色を魅せて視聴者を驚かせようとしていたのかな?と思わせるシーンだった。
しかし、同じシュチュエーションのヨリでパン(カメラレンズを横に流すことをパンと言う)でカメラが横揺れ縦揺れしていたのが残念でした。
カメラが揺れていたのは、1990年当初の撮影機材でこのシーンを撮影するには揺れるしかなかったのかな、と色々考えさせられました。

あと書いておきたいこととしては、実はわたし、この映画の絵コンテを手に入れたのでそれを踏まえて思考したんですが、おそらくこの映画の台本は「台本というより小説に近い」ものだったのではなかろうかと思わせられました。
どういうことかというと、台本が文面の中で文学的、小説的になっていることを役者やスタッフは思考し、黒澤監督の様子をうかがいながら撮影はすすんでいったのではなかろうかと思いました。

勉強になりました。
ルパン3000世

ルパン3000世