Toranosaurus

夢のToranosaurusのレビュー・感想・評価

(1990年製作の映画)
4.0
なんとも語るのが難しい。というのも、文字通りの「夢」らしく、幻想的な部分と妙に現実的で人間の暗さが見える部分とが混在しているからだ。
ショットの美しさと音楽の絡み合いはもう文句のつけようがなく、このショットを画面全体に映した時点で勝利、みたいな気分になる。その反面、台詞回しは明らかに今風ではなく、音声のエコー処理とかも、さすがに安っぽく見えてしまう。ここは技術的にもう一工夫欲しかったところ。技術的には古くても古びない表現というのはあるはずだから。
まず印象に残ったのが、自然(や妖怪だの精霊だのの超常的な存在)の美しさに対して、人間の行いの醜さである。戦後の気配と核戦争の脅威がある最中に作られた作品だけあって、そこはもうはっきりと対比的に描かれている。
両者が統合されるのは、最後の「水車のある村」なのだろう。これはある種のユートピアなのだが、やっぱり映画監督は最後には、皆で歌って踊る作品を作るんだなぁ、と(フェリニーノの 8 1/2かよ)。今から見ると、それはあまりにも楽天的にも見えるのだけれど、逆にそのくらいの極端さが心地良くもある。
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